「そしたら部活が終わる頃に迎えに行くね。」
伊勢谷が立ち去って、英語準備室の真ん前で成海に言われ、菫は心底嫌そうな顔をした。
「迎えに行くってなに?」
「だって、すーちゃんは今から部活に行かないとダメでしょ?俺、教室で課題しながら待ってるから。部活が終わったら、一緒に帰って晩ご飯でも食べながら、勉強会しよ。」
なにが勉強会だ!!もう本当に意味不明!!
「私、あんたに勉強教えるつもりなんてないから!」
菫が啖呵をきっても、成海はケロリとしている。
「すーちゃんってさ、俺のこと何も知らないでしょ?知らない相手をそうやって毛嫌いするのは良くないよ。」
「……。」
「俺は知りたいと思っているけど。」
ふっと成海は笑みをこぼし、手を伸ばして優しく菫の髪をなでた。
「待ってるから。来なかったら明日、伊勢谷ちゃんに言いつけるから。委員長がすっぽかしましたって。」
思ったより柔らかい成海の手の感触に、菫は体が熱を帯びるのを感じた。
「気安く触らないで!バカ!バカ!いいわよ!教えるわよ!そのかわり、理解しなかったら許さないから。」
菫は成海に言い切って、その場から走って逃げ去った。

