「文化祭の出し物は何にしますかー?」


ホームルームの時間。この間の委員長会議で文化祭の出し物を決めるように言われていたので、今日は時間を割いてもらっていた。


菫が教壇で声を張り上げると、パッと何名かが手を挙げながら


「クレープ!」

「シュークリーム!」

「パフェ」


と思い思いの発言をする。


「もういっそのこと、カフェとかしたらー?全部出せるじゃん。」


そう一番後ろから、怠そうに発言するのは、鋭い眼光、長身、痩せ型の安藤真尋(アンドウ マヒロ)だ。


校則で頭髪を染めることは禁止されているが、赤茶色に髪を染め、左側に髪を全部寄せて、右側は剃り込んでいるという個性的な髪。


生徒指導の先生に目の敵にされているが、のらりくらりと言い訳をして、逃げ切っている。


担任の伊勢谷は呑気に「思い切った髪してるなー。」としか言わなかったが。


どうも噂では、他所の学校の子とバンド活動をしているらしかった。


「あ、じゃあコスプレしてカフェしようよ!」


理沙がはいはーいと大きく手を挙げる。理沙は自分の思っていることを、どんな場面でも物怖じせずに発言するタイプだった。


「もうメイド喫茶とか飽きちゃったからさ、なんかキャラクター的なもののコスプレ的なんとか?」

「あ、じゃあアリスとかは?キャラクターも一杯いるじゃん!」

「いい!楽しそう!」


盛り上がる女の子に置いてきぼり感満載の男の子。


なんとか話題に入れるようにしなきゃと、菫は思ったけど、いかにまとめたら良いのか……これと言って、頼れる男の子がいない。


「おい!男共、女子にこのまま飲み込まれるけど、いいのか?」


菫が躊躇していると、教室の一番後ろで両腕を組んで様子を見守っていた伊勢谷が助け舟をだした。