会議が終わって、担当の先生が部屋から出て行った瞬間、3名の女子生徒が教室に乱入してきた。


学校指定の上靴の先端は緑色。菫たちの学年の色は赤色だ。緑色はひとつ上の学年にあたる。


「成海くん、委員長してたんだね。てか、今日は私と帰る約束だよね。」


最初に口火を切ったのは、肩まである髪をコテでうちに巻いて、唇にテカテカのグラスを塗ったお目目ぱっちりの女の子だった。


「なに言ってるのよ!私と帰るのよ!成海くん、私の家、今日は親が帰ってこないんだ。」


張り合うように隣に立っていた女の子が声をあげる。3人中で一番スカートが短い。


「何あんた!?体目当てなんでしょ?だったら他の男に行きなさいよ!私は本気で成海くんが好きなんだから!」


教室でそんな言葉吐くなよ……。


菫は気付かれないように、一番最後に叫んだショートカットの髪の女の子に冷ややかな視線を送った。


部活に行こう。こんなチャラ男と同じ空気を吸いたくない。何人の女の子をたぶらかしているんだか。


菫が学生鞄をつかみ、椅子を引いて立ち上がると、


「すーちゃん、また明日。」


自分の目の前で、自分のせいで女の子がもめているのに、部外者面をした成海が菫に手を振って来た。


そして、「すーちゃん」に反応して、3人の女の子達は、一斉に菫を睨みつけた。あんた何者?と言いたげに。


……勘弁して欲しい。


ここで成海にまた明日なんて言えば、滅多打ちにあうかもしれない。


ちょっと罪悪感だけど、無視して帰ろう。


自分の身の方が今は大切だと言い聞かせながら、菫は成海を見ることはしなかった。