こちらの逃げの姿勢もまた然り。書けないくせに小説家志望とうそぶくユメと、書いているくせに脚本家志望とは言えない私は、果たしてどちらの方がタチが悪いのだろう。
「私の父親、まさに『好き』を仕事に選んだ人間なんだ」
「うん?」
「パティシエ。私が子供の頃に独立して自分の店を出したんだけど、そこから地獄よ。何度潰しかけたことか」
「……ひょっとして、ウチで経理やってるのって、家のことを考えてる?」
「え? ああ、それは全然」
あれは家業と呼べるような店ではない。特段お菓子作りや料理が好きなわけでもないし、私が親から受け継いだのは「好きに生きたもん勝ち」というマインドくらいだろう。
「私はただ生活の心配をせずに済む大手の企業で、できるだけ残業の少ない部署に収まっただけ。それがたまたまササメの経理だっただけで」
お菓子業界のドンであるササメに就職して一番良かったと思える点は、やはり差し入れ方面だ。父の男気の詰まったケーキを持たされるより、会社で買った焼き菓子を持っていった方が評判がいいし経済的ですらある。
「とにかく私は、演劇は趣味と割り切って楽しく沼にハマりたい。脚本でお金を稼ごうなんて、怖くて考えられないの」
「それは生活の心配があるから? じゃあ、お金は関係なかったら?」
「へ?」
「私の父親、まさに『好き』を仕事に選んだ人間なんだ」
「うん?」
「パティシエ。私が子供の頃に独立して自分の店を出したんだけど、そこから地獄よ。何度潰しかけたことか」
「……ひょっとして、ウチで経理やってるのって、家のことを考えてる?」
「え? ああ、それは全然」
あれは家業と呼べるような店ではない。特段お菓子作りや料理が好きなわけでもないし、私が親から受け継いだのは「好きに生きたもん勝ち」というマインドくらいだろう。
「私はただ生活の心配をせずに済む大手の企業で、できるだけ残業の少ない部署に収まっただけ。それがたまたまササメの経理だっただけで」
お菓子業界のドンであるササメに就職して一番良かったと思える点は、やはり差し入れ方面だ。父の男気の詰まったケーキを持たされるより、会社で買った焼き菓子を持っていった方が評判がいいし経済的ですらある。
「とにかく私は、演劇は趣味と割り切って楽しく沼にハマりたい。脚本でお金を稼ごうなんて、怖くて考えられないの」
「それは生活の心配があるから? じゃあ、お金は関係なかったら?」
「へ?」
