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何もないまっさらな舞台に、貴博さんが立っている。その満足げな表情は、公演への評価と受け取ってもいいだろうか。
「お疲れ様」
おもむろにイケメンが振り向いた。が、それ以上動く気配がないので私の方が舞台に上がる。
「えっと……みんな打ち上げ会場に行っちゃったんだけど」
「あー、俺はパス」
「パスって、せっかく一日早めたのに」
千秋楽の後はすぐさま撤収作業が始まって、打ち上げは翌日に持ち越されるのが劇団カフェオレの常である。ゲネプロほど大きなイレギュラーではないけれど、今日でいなくなる彼のために勇也さんがタイムテーブルを繰り上げたことは間違いなかった。
「文字通り今回の立役者なんだから、挨拶くらいしてってよ」
「俺のこと苦手なスタッフもいるだろ。代わりに奈央子でも呼んでやった方が、盛り上がるんじゃないのか?」
貴博さんの主張は、悲しいかな間違ってはいない。他に誰もいないスタジオで、彼が一人感慨にふけっているこの状況が既にそれを物語っている。
「そこで気を使うくらいなら、もっと愛想よくすればいいのに」
「舞台に立っているだけでいいって、言ったのは深雪だろ」
「確かに」
そのやり取りに笑顔が付随することで、私たちが互いに全く遠慮していないことが分かる。たった二ヶ月ちょっとでそんな関係を築けるなんて、それはそれで喜ばしいことではないだろうか。
何もないまっさらな舞台に、貴博さんが立っている。その満足げな表情は、公演への評価と受け取ってもいいだろうか。
「お疲れ様」
おもむろにイケメンが振り向いた。が、それ以上動く気配がないので私の方が舞台に上がる。
「えっと……みんな打ち上げ会場に行っちゃったんだけど」
「あー、俺はパス」
「パスって、せっかく一日早めたのに」
千秋楽の後はすぐさま撤収作業が始まって、打ち上げは翌日に持ち越されるのが劇団カフェオレの常である。ゲネプロほど大きなイレギュラーではないけれど、今日でいなくなる彼のために勇也さんがタイムテーブルを繰り上げたことは間違いなかった。
「文字通り今回の立役者なんだから、挨拶くらいしてってよ」
「俺のこと苦手なスタッフもいるだろ。代わりに奈央子でも呼んでやった方が、盛り上がるんじゃないのか?」
貴博さんの主張は、悲しいかな間違ってはいない。他に誰もいないスタジオで、彼が一人感慨にふけっているこの状況が既にそれを物語っている。
「そこで気を使うくらいなら、もっと愛想よくすればいいのに」
「舞台に立っているだけでいいって、言ったのは深雪だろ」
「確かに」
そのやり取りに笑顔が付随することで、私たちが互いに全く遠慮していないことが分かる。たった二ヶ月ちょっとでそんな関係を築けるなんて、それはそれで喜ばしいことではないだろうか。
