「真っ当な大人――例えばミノルから見れば、ヒロは確かにろくでもない奴だろう。だからこそミノルは、存在すらしていないヒロをどうにかしてユメから引き離そうとする。いい加減現実を見ろと迫るんだ」
「だからヒロは……」
「ただし」
突然ニッコリと微笑んで、勇也さんは掌を返す。
「俺たちは創作の面白さを知っている。人生楽しんで何が悪いとユメや観客に思わせることができたなら――その時はきっと君の勝ちだ」
「勝ちって」
思わず私が突っ込んでしまう。
確かにヒロとミノルはそれぞれ夢と現実の体現であり、物語はユメを巡る三角関係の様相を呈しているが、その本質はユメ自身の葛藤だ。
「お、深雪がそういう態度?」
勇也さんは底意地の悪そうな表情をこちらに向けた。
「俺だってそろそろ演劇から足を洗おうかとか考えるよ。特にミノル役をもらってから、真っ当な大人の思考回路が頭にちらつくしね」
「え!?」
それは困る。非常に困る。
「ダメです、無理です! 勇也さんが辞めたら誰が舞台立てるんですか? 稽古場回すんですか? 私が脚本書くしか能がないこと分かってますよね!?」
「何? 深雪って俺がいないとダメなの?」
「はい!」
少々悪意のある質問に、恥も外聞もなく頷いていた。
「演劇が泥沼だっていうなら、沈むまで一緒にあがいてください。沈まなくて済むよう、楽しく続けられるよう手を尽くしますから」
「だからヒロは……」
「ただし」
突然ニッコリと微笑んで、勇也さんは掌を返す。
「俺たちは創作の面白さを知っている。人生楽しんで何が悪いとユメや観客に思わせることができたなら――その時はきっと君の勝ちだ」
「勝ちって」
思わず私が突っ込んでしまう。
確かにヒロとミノルはそれぞれ夢と現実の体現であり、物語はユメを巡る三角関係の様相を呈しているが、その本質はユメ自身の葛藤だ。
「お、深雪がそういう態度?」
勇也さんは底意地の悪そうな表情をこちらに向けた。
「俺だってそろそろ演劇から足を洗おうかとか考えるよ。特にミノル役をもらってから、真っ当な大人の思考回路が頭にちらつくしね」
「え!?」
それは困る。非常に困る。
「ダメです、無理です! 勇也さんが辞めたら誰が舞台立てるんですか? 稽古場回すんですか? 私が脚本書くしか能がないこと分かってますよね!?」
「何? 深雪って俺がいないとダメなの?」
「はい!」
少々悪意のある質問に、恥も外聞もなく頷いていた。
「演劇が泥沼だっていうなら、沈むまで一緒にあがいてください。沈まなくて済むよう、楽しく続けられるよう手を尽くしますから」
