「確かカフェオレって、私の前に脚本を書いていた方が立ち上げたんですよね?」
「そう。俺の更に先輩で、学生時代にどっぷり演劇中毒になったその人が、大学卒業後の活動場所として作ったのがこの劇団。プロを目指すわけじゃない、いつか辞めるけど今じゃない。白黒つけたくなかったからカフェオレ」
「立ち上げた時から辞めることが前提だったんですか?」
「うん、その先輩はそうらしいね」
あっさり頷く勇也さんに対し、貴博さんは怪訝そうに眉をひそめた。でも、彼か彼女かも分からないその先輩の気持ちも、私にはよく分かる。
「先輩が本当に辞めることになった時、同じタイミングで演劇を卒業した人もいたけどさ、俺は今じゃないなと思ったんだ。で、脚本書けるしやっぱり未練タラタラだった深雪を誘ったわけ」
その点、私はとても幸運だった。
既存の劇団に身一つで転がり込むことができる役者と違い、脚本家が舞台を立てたい思ったら普通は自分でプロデュースするしかない。なのに、私は自分で立ち上げたわけでもない劇団の座付き脚本家に収まることができたのだ。おまけにプロデューサー業務の大半は、勇也さんが担ってくれている。
「つまりね」
俯きがちに思考を巡らせていた貴博さんの横顔を、勇也さんが覗き込んだ。
「創作活動をやってる人間って、誰しも思う時があるんだよ。本当にこんなことやってていいのかって」
「……誰しも?」
「そう。俺の更に先輩で、学生時代にどっぷり演劇中毒になったその人が、大学卒業後の活動場所として作ったのがこの劇団。プロを目指すわけじゃない、いつか辞めるけど今じゃない。白黒つけたくなかったからカフェオレ」
「立ち上げた時から辞めることが前提だったんですか?」
「うん、その先輩はそうらしいね」
あっさり頷く勇也さんに対し、貴博さんは怪訝そうに眉をひそめた。でも、彼か彼女かも分からないその先輩の気持ちも、私にはよく分かる。
「先輩が本当に辞めることになった時、同じタイミングで演劇を卒業した人もいたけどさ、俺は今じゃないなと思ったんだ。で、脚本書けるしやっぱり未練タラタラだった深雪を誘ったわけ」
その点、私はとても幸運だった。
既存の劇団に身一つで転がり込むことができる役者と違い、脚本家が舞台を立てたい思ったら普通は自分でプロデュースするしかない。なのに、私は自分で立ち上げたわけでもない劇団の座付き脚本家に収まることができたのだ。おまけにプロデューサー業務の大半は、勇也さんが担ってくれている。
「つまりね」
俯きがちに思考を巡らせていた貴博さんの横顔を、勇也さんが覗き込んだ。
「創作活動をやってる人間って、誰しも思う時があるんだよ。本当にこんなことやってていいのかって」
「……誰しも?」
