スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました

「実はまだちょっと拗ねてて、降りるとか降りないとか」
 すると貴博さんは、奇しくも勇也さんと同じ提案を口にした。
「前から思ってたんだけど……深雪は舞台に立たないのか?」
「へ?」
「企画書を読んだ時から、俺は深雪のユメが見てみたかったんだ」
 ――企画書って、喫茶店で初めて会ったあの時から?
 聞き返す前に貴博さんは去っていく。私も経理部に戻らなければならないのに、頭の中はまだ舞台のことでいっぱいで、とてもじゃないが仕事は手に付きそうにない。
 その日の夜、ユメに代役を立てることを正式に決定した。
 蓋を開けてみれば満場一致で採択されたのは、既に役者陣の意向が固まっていたからだろうか。