であれば一つ、保険を掛けておく。
「もし本番に来なかったら、逆にあなたのこと会社中に言いふらすからね」
彼の顔が、分かりやすくひきつっていた。
「勘弁してくれ」
先程の壁ドンの勢いはどこへやら。気付けば立場が逆転している。
「ちなみに貴博さんの所属は? 私は経理部でずっと伝票打ってるんだけど」
「……このタイミングでよく聞けるな」
「だってその態度、部活の時は普通なのに教室で会った途端にツンケンしてくる男子みたいなものでしょ。大丈夫。そういうのは慣れてる」
「ひどいな」
ついでにいえば、私には「教室」に演劇の話ができる友達がいないから、実は情報漏洩の心配はなかったりする。
「でも良かった。まだ出てくれる気はあったんだ」
「え?」
「しばらく休むって、いつまで休むつもりなのか全然分からなかったから」
「ああ、悪い」
貴博さんは、こちらが拍子抜けするほど素直に謝ってくれた。
「ちょっと仕事が立て込んでて、いつまで休むことになるか俺にも分からなかったんだ。でも、今のうちに片付けとかないと本番に影響しそうだったし」
「そういうこと? だったら言ってくれれば良かったのに」
やっぱりこの男、演劇のことを案外気に入っているらしい。
「じゃあ奈央子の機嫌は私が取っておくから、改めてよろしく」
そう話すと、打ち解けたと思っていた彼の表情がまた険しくなる。
「あの女、まだあんな感じなのか」
「もし本番に来なかったら、逆にあなたのこと会社中に言いふらすからね」
彼の顔が、分かりやすくひきつっていた。
「勘弁してくれ」
先程の壁ドンの勢いはどこへやら。気付けば立場が逆転している。
「ちなみに貴博さんの所属は? 私は経理部でずっと伝票打ってるんだけど」
「……このタイミングでよく聞けるな」
「だってその態度、部活の時は普通なのに教室で会った途端にツンケンしてくる男子みたいなものでしょ。大丈夫。そういうのは慣れてる」
「ひどいな」
ついでにいえば、私には「教室」に演劇の話ができる友達がいないから、実は情報漏洩の心配はなかったりする。
「でも良かった。まだ出てくれる気はあったんだ」
「え?」
「しばらく休むって、いつまで休むつもりなのか全然分からなかったから」
「ああ、悪い」
貴博さんは、こちらが拍子抜けするほど素直に謝ってくれた。
「ちょっと仕事が立て込んでて、いつまで休むことになるか俺にも分からなかったんだ。でも、今のうちに片付けとかないと本番に影響しそうだったし」
「そういうこと? だったら言ってくれれば良かったのに」
やっぱりこの男、演劇のことを案外気に入っているらしい。
「じゃあ奈央子の機嫌は私が取っておくから、改めてよろしく」
そう話すと、打ち解けたと思っていた彼の表情がまた険しくなる。
「あの女、まだあんな感じなのか」
