「入ってきた時に言いそびれましたけど、めちゃくちゃ格好いいです」
 すると彼は、私が惚れ込んだ不敵な微笑みを作ってみせた。
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってる?」
 脚本家で演出家の創作フリークが、ビジュアルだけでスカウトしてしまった顔だけ男。すなわち――。
「理想のイケメン、ってところかな」
 コンコン、と控えめにノックの音がする。控室のドアが開いて、スタッフからお呼びがかかった。
「行こうか、花嫁さん」
「はい」
 貴博さんが紳士的に右手を差し出したので、私もそっとその手を取り、二人揃って歩き出す。
 さあ、結婚式だ。新たな舞台の幕開けである。