その指先が、更に奥を探っていく。
「ホントに、もう……あ、ああ!」
 頂まで昇りつめそうになった瞬間、貴博さんが不意に手を止めた。
「だめ、なの?」
「……やだもう、貴博さん!」
 さっきと百八十度違う「やだ」を言わされた。
「貴博さんが欲しい。全部欲しい」
「うん」
 最高にじらしてくれた貴博さんを自ら求める形になって、私たちは一つになった。先程まで恥ずかしがっていたのが馬鹿みたいに全て曝け出し、全力で求め合い、深く深くつながっていく。
 悩ましげに顔を歪め、息を弾ませながらも突き進むことをやめないこの男が、私のために遠慮しているとはもう思わない。だから私もまた、安心して身を委ねることができていたのだろう。
「貴博さん!」
 必死でしがみつく私を抱きとめ、同じ所へ導きながら彼は絶頂に達した。小さく唸ったその声が、ものすごく色っぽく響く。
「……深雪」
 共にベッドに潜り込み、恍惚の余韻に浸る中、貴博さんは耳元でささやいた。
「愛してる」
 ずっと欲しかった言葉を不意に寄越して、彼はギュッと私を抱きしめた。もし狙って告げたのならとんでもない策士だが、この男にそんな小細工などできないことは分かっている。
「私も、愛してる」
 貴博さんの腕の中で、私は幸せな眠りについていた。