「他の役者の小道具でも、演出家なら試着してみることがあったろ? さすがにちょっと自信がなさそうだったけど、中指にぴったりだっていう指輪を借りた。あとは深雪の読み通り、プロと相談」
なるほど。納得した。
「まったく、格好くらいつけさせろよな」
「え?」
貴博さんがおもむろにベッドに座り込む。
「もうとっくにバレてるだろうけど、俺には恋愛経験なんかないと言っていい。脚本に書いてあれこれ人に指示できるくらい経験豊富な深雪と違って」
初めてこちらが見下ろす側の構図に身を置き、観念しましたとばかり白状する様を見せつけられているというに、彼の表情はずっと堂々としたまま。そのせいでちょっと、混乱させられる。
「前に自分を抱けるかって正面切って聞かれた時は本当に怖かった。この結婚はウィンウィンだって偉そうに話しておきながら、上手くいかなかったから終わりじゃないか。だから見栄を張って余裕なふりして……実際のところずっと必死だった」
そんなの、知らない。
「幻滅されるわけにはいかなかったからさ」
「するわけないでしょ」
この男の恋愛下手がどういうものなのか、ようやく分かってきた。
なるほど。納得した。
「まったく、格好くらいつけさせろよな」
「え?」
貴博さんがおもむろにベッドに座り込む。
「もうとっくにバレてるだろうけど、俺には恋愛経験なんかないと言っていい。脚本に書いてあれこれ人に指示できるくらい経験豊富な深雪と違って」
初めてこちらが見下ろす側の構図に身を置き、観念しましたとばかり白状する様を見せつけられているというに、彼の表情はずっと堂々としたまま。そのせいでちょっと、混乱させられる。
「前に自分を抱けるかって正面切って聞かれた時は本当に怖かった。この結婚はウィンウィンだって偉そうに話しておきながら、上手くいかなかったから終わりじゃないか。だから見栄を張って余裕なふりして……実際のところずっと必死だった」
そんなの、知らない。
「幻滅されるわけにはいかなかったからさ」
「するわけないでしょ」
この男の恋愛下手がどういうものなのか、ようやく分かってきた。
