スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました

「たいした意味はない。まだ招待してなかったなと思ったから……じゃ、ダメか?」
「ダメじゃないけど」
 今までご招待といかなかったのは、行き当たりばったりに近い貴博さんの段取りの悪さのせいだと、もうちょっと自覚してほしい。
 それでもここまで私の手を引き、今も扉を開けて待ってくれている彼に免じて、小さな一歩を踏み出した。
「お邪魔します」
 やはり玄関からして、広い。
 パッと見た印象は白い壁と黒い床のモノトーン。表に見えている木目が黒っぽい、ベースからお洒落な部屋である。
 案内されるまま奥のリビングダイニングへ進むと、途端に天井が高くなった。メゾネット式で二階部分が吹き抜けになっているらしい。見上げるほど高い位置に採光用の窓があり、振り向けば部屋の端に階段があった。
 その階段に、貴博さんはまっすぐに足を向けた。
「え?」
 さすがに動揺した。話をするなら目の前のソファで十分なのに。
「ああ、ちょっと取ってくるものがあるだけだから。別に座って待っててくれてもいい」
「てもいい、って」
 そんな言い方をされたら引き下がりづらくなるではないか。と、結局はリビングを素通りした彼の後をついていく。
 横目に見るコの字型のソファは、大画面のテレビを囲っていた。結構な人数が座れそうだけど、友達とか家に呼ぶタイプなのだろうか。
 ……あれ?