*
私の手を引いてタクシーに乗り込んだ貴博さんは、行き先を告げて車が走り出してから一切言葉を発さずにいた。何か考えているようにも見えたので大人しくしていたが、さすがに沈黙が重すぎる。
「あの、貴博さん」
「うん?」
「貴晴くんに連絡してもいい……ですか?」
「は?」
黙り込んだままの貴博さんを見つめながら様々に思考を巡らせていたところ、最後まで面倒を見ると約束したそばから授業をすっぽかしている自分に気が付いた。しかもポケットの中のスマホ以外、荷物も全て彼の部屋に置いてきてしまったではないかと。
「今気にすることか?」
「そうなんですけど」
いきなりコアな話ができなくて、つい貴晴くんをダシに使ってしまった。しかもいまだに緊張すると敬語が飛び出すものらしい。
改めて息を整え、話し掛ける。
「あの、やめてよね。私のために危ない橋を渡るの」
「別に……大人しく寝たふりしてた方が安全だった気もするし」
「だとしても」
そもそも麗さんと二人で会う必要も、なかったはずではないか。
「俺の好奇心でもあったからそこは悪いと思ってる。しかし、俺は深雪に変なところで信用されてるんだな」
「変なところ?」
「酔った勢いくらいで女とどうこうなるわけないって……まあ事実だけど」
苦笑した彼に、つい食って掛かる。
「それを言ったら貴博さんだって」
「うん?」
私の手を引いてタクシーに乗り込んだ貴博さんは、行き先を告げて車が走り出してから一切言葉を発さずにいた。何か考えているようにも見えたので大人しくしていたが、さすがに沈黙が重すぎる。
「あの、貴博さん」
「うん?」
「貴晴くんに連絡してもいい……ですか?」
「は?」
黙り込んだままの貴博さんを見つめながら様々に思考を巡らせていたところ、最後まで面倒を見ると約束したそばから授業をすっぽかしている自分に気が付いた。しかもポケットの中のスマホ以外、荷物も全て彼の部屋に置いてきてしまったではないかと。
「今気にすることか?」
「そうなんですけど」
いきなりコアな話ができなくて、つい貴晴くんをダシに使ってしまった。しかもいまだに緊張すると敬語が飛び出すものらしい。
改めて息を整え、話し掛ける。
「あの、やめてよね。私のために危ない橋を渡るの」
「別に……大人しく寝たふりしてた方が安全だった気もするし」
「だとしても」
そもそも麗さんと二人で会う必要も、なかったはずではないか。
「俺の好奇心でもあったからそこは悪いと思ってる。しかし、俺は深雪に変なところで信用されてるんだな」
「変なところ?」
「酔った勢いくらいで女とどうこうなるわけないって……まあ事実だけど」
苦笑した彼に、つい食って掛かる。
「それを言ったら貴博さんだって」
「うん?」
