一瞬キョトンとしたものの、麗さんはちょうどいいわと言わんばかりの勝ち気な笑みを浮かべた。
「いらしてたの?」
「ええ、まあ」
曖昧に頷くと、私が篠目家で家庭教師をしている事情を文乃さんがわざわざ説明し始めた。
東大卒で、面倒見が良くて、手を焼いていた下の子も先生のことをすごく信頼しているのよ――と言い訳がましく伝えている。
ああ、そうか。麗さんは文乃さんが連れてきたお見合い相手だから、自称婚約者の私が家にいたらまずいのだ。近頃は家庭教師として認められつつあったから、自分の立場を忘れるところだった。
「へえ。まだこんなところをうろちょろしていたわけね」
しかし麗さんは余裕の表情を崩さない。初めて会ったらしい貴晴くんにも笑顔で挨拶していた。
「私、文乃さんにお話があって来たのだけど、良かったらあなたたちも聞いてくださる?」
返事を待たずに文乃さんの方へ視線を戻すと、一音一音はっきりと、聞こえよがしに言い放った。
「貴博さんの子供を妊娠しました」
「……はい?」
理解できずに聞き返すと、彼女はもう一度全く同じ台詞を繰り返した。
「貴博さんの子供を妊娠しました」
そんな馬鹿なことはない。
信じられなかったのは私だけではなく、文乃さんもまた同じくらい驚いて言葉を失っていた。
そんな中、真っ先に声を上げたのは私の隣にいた貴晴くんだった。
「マジ!?」
「いらしてたの?」
「ええ、まあ」
曖昧に頷くと、私が篠目家で家庭教師をしている事情を文乃さんがわざわざ説明し始めた。
東大卒で、面倒見が良くて、手を焼いていた下の子も先生のことをすごく信頼しているのよ――と言い訳がましく伝えている。
ああ、そうか。麗さんは文乃さんが連れてきたお見合い相手だから、自称婚約者の私が家にいたらまずいのだ。近頃は家庭教師として認められつつあったから、自分の立場を忘れるところだった。
「へえ。まだこんなところをうろちょろしていたわけね」
しかし麗さんは余裕の表情を崩さない。初めて会ったらしい貴晴くんにも笑顔で挨拶していた。
「私、文乃さんにお話があって来たのだけど、良かったらあなたたちも聞いてくださる?」
返事を待たずに文乃さんの方へ視線を戻すと、一音一音はっきりと、聞こえよがしに言い放った。
「貴博さんの子供を妊娠しました」
「……はい?」
理解できずに聞き返すと、彼女はもう一度全く同じ台詞を繰り返した。
「貴博さんの子供を妊娠しました」
そんな馬鹿なことはない。
信じられなかったのは私だけではなく、文乃さんもまた同じくらい驚いて言葉を失っていた。
そんな中、真っ先に声を上げたのは私の隣にいた貴晴くんだった。
「マジ!?」
