スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました

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 貴晴くんから模試の結果が届いたと聞き、いそいそと篠目邸へ足を運ぶ。
 家庭教師をするうちに、この家は私にとっても勝手知ったる場所となってきていた。夏の盛りに入り、ラフなティーシャツスタイルさえ気にしなくなっている。
 インターフォンを押したら案内を待たずに通用口へ進み、玄関で文乃さんに挨拶したらまっすぐに貴晴くんの部屋に向かう。
 今日の彼は、少々緊張した面持ちだった。
「どうだった?」
「まだ見てない。なんかちょっと怖くて」
「いいことじゃない」
 結果が怖いということは、それだけ頑張った証だ。以前の彼なら、どんなに悪くても「こんなもの」と思っていただろう。
「じゃあ、いくよ」
 貴晴くんがスマホを掲げつつこちらに寄ってきたので、私も一緒に覗き込んだ。
 画面が白く光った後、ちょっと懐かしさを感じる図表の形式で数値が並んでいく。学力テストの結果など何年ぶりに見るだろう。
「ウソ……」
 呟いたのは彼の方。現状はまだ、合格ラインには遠く及ばない。
 大丈夫、ちょっと勉強しただけで急にA判定が取れるわけじゃないんだから。と、声を掛けようとして彼が笑みをこぼしていることに気が付いた。
「こんな点数初めて取った」
 ……ああ、そうくるか。