「とにかく、文章を読むというのは全科目共通の課題だから丁寧にやっていこう。ちゃんと理解できるようになったら、暗記ものの効率も上がるからさ」
「へえ」
完全に納得したわけではなさそうだが、貴晴くんも私の授業に興味は持ってくれたようだ。
初めに文乃さんと相談した際は、お試しで週末だけ出向いてみるという話だった。
けれど浪人生相手にあまり悠長にもしていられない。彼が多少なりともやる気になってくれたことで自然とこちらも気合いが入り、篠目邸へ足繁く通うようになっていく。
もともと演劇のために定時で帰る習慣のあった私にとって、終業後に立ち寄ることは苦ではない。貴晴くんへの課題を考えることも思いのほか楽しかった。面倒見がいいという奈央子の評価は口から出任せとばかり思っていたが、案外事実であり彼女の本心だったのかもしれない。
授業での直接指導はもちろん、浪人生の彼の場合、平日の真昼間にどう自習してもらうかも重要である。
その辺りも顧みて、普段から台詞と格闘している役者たちに暗記方法に関するリサーチをしてみた。私はひたすら書いて覚えるタイプだったが、声に出して覚えたいタイプもいれば、画に変換してイメージで覚えるといういかにも役者らしい方法を編み出している者もいた。
「へえ」
完全に納得したわけではなさそうだが、貴晴くんも私の授業に興味は持ってくれたようだ。
初めに文乃さんと相談した際は、お試しで週末だけ出向いてみるという話だった。
けれど浪人生相手にあまり悠長にもしていられない。彼が多少なりともやる気になってくれたことで自然とこちらも気合いが入り、篠目邸へ足繁く通うようになっていく。
もともと演劇のために定時で帰る習慣のあった私にとって、終業後に立ち寄ることは苦ではない。貴晴くんへの課題を考えることも思いのほか楽しかった。面倒見がいいという奈央子の評価は口から出任せとばかり思っていたが、案外事実であり彼女の本心だったのかもしれない。
授業での直接指導はもちろん、浪人生の彼の場合、平日の真昼間にどう自習してもらうかも重要である。
その辺りも顧みて、普段から台詞と格闘している役者たちに暗記方法に関するリサーチをしてみた。私はひたすら書いて覚えるタイプだったが、声に出して覚えたいタイプもいれば、画に変換してイメージで覚えるといういかにも役者らしい方法を編み出している者もいた。
