スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました

 更にいえば「国語」とは「日本語」のことである。だから国語の問題として扱う際は、小説も行間を読んではいけない。問われているのは「書かれていることを正確に理解して情報を整理する能力」なのだ。
「そんなこと考えずに感覚で解いちゃう人も多いけどね」
 ちなみに、読書は好きだが国語は苦手だという学生は大抵ここでつまずいている。感性をフル稼働させ、行間まで深く読み込んだ答えは「文字通り」を超えた解釈となってしまうからだ。
 もちろん趣味としての読書はそれで構わないし、むしろそんなふうに想像力を働かせることこそ楽しいのだけど、国語の試験では読み方を切り替えなければならない。
「知らなかった」
 貴晴くんが愕然としている。
「国語の先生にとっては暗黙の了解みたいなものだから。わざわざ説明しなくても、できる生徒は直感的にできちゃうし」
「どうせ深雪先生はできる生徒だったんでしょ?」
「いや、そうでもないよ」
 もともとは私も、感性をフル稼働させてしまうタイプだった。
 しかし演劇を始めてからは、他人と考えていることを共有するため、正確に言葉を使うことが求められるようになった。そして以前の自分と同じように感性だけで脚本を読む役者とも意思の疎通を図るため、根気強く言語化に勤しんでいる。