むしろ彼女の方がケンカを吹っ掛けにきたように聞こえるが、疑問そのものは真っ当だった。何か返さなければと、言い訳をぼそぼそ口にする。
「だから、その……麗さんがいるなんて知らなかったんです。私は文乃さん、貴博さんのお母様に会いにきたので」
「へえ」
先程の会話の流れから、私の置かれた状況はだいたい掴めたのだろう。扉一枚隔てていても伝わるくらいはっきりと、鼻で笑われてしまった。
「でも、あなたにササメの次期社長の妻が務まるとは思えないわ。早いところ諦めた方が賢明じゃないかしら?」
「……違う」
おそらくはそうだけど、きっとそうではない。婚約にあたり、私と貴博さんは全く別次元の話をしていたのだ。
無意識に抗議しようとして、ドアを開けていた。
「ササメの御曹司と結婚するんじゃありません。私は、篠目貴博さんと結婚するんです」
「あら、そう」
丸腰のまま姿を晒した婚約者を、お見合い相手は一笑に付す。
彼女の方はオーラというか、気迫によって武装されていた。私より背も低いし華奢なのに、ピシッと背筋を伸ばした立ち姿はとにかく圧が強かった。
「いいことを聞いたわ。確かに彼、御曹司扱いとか嫌いそうよね」
麗さんはたくましい。そんな彼女に、私は余計なことを言ってしまったかもしれない。
「だから、その……麗さんがいるなんて知らなかったんです。私は文乃さん、貴博さんのお母様に会いにきたので」
「へえ」
先程の会話の流れから、私の置かれた状況はだいたい掴めたのだろう。扉一枚隔てていても伝わるくらいはっきりと、鼻で笑われてしまった。
「でも、あなたにササメの次期社長の妻が務まるとは思えないわ。早いところ諦めた方が賢明じゃないかしら?」
「……違う」
おそらくはそうだけど、きっとそうではない。婚約にあたり、私と貴博さんは全く別次元の話をしていたのだ。
無意識に抗議しようとして、ドアを開けていた。
「ササメの御曹司と結婚するんじゃありません。私は、篠目貴博さんと結婚するんです」
「あら、そう」
丸腰のまま姿を晒した婚約者を、お見合い相手は一笑に付す。
彼女の方はオーラというか、気迫によって武装されていた。私より背も低いし華奢なのに、ピシッと背筋を伸ばした立ち姿はとにかく圧が強かった。
「いいことを聞いたわ。確かに彼、御曹司扱いとか嫌いそうよね」
麗さんはたくましい。そんな彼女に、私は余計なことを言ってしまったかもしれない。
