というか本当は、貴博さんをキャスティングするにあたってそう結論づけた。
主人公の妄想が生み出した……なんて聞くと少々イタく感じるかもしれないが、小説を書く彼女にとって妄想でキャラクターを作ることなど日常茶飯だ。自分が生み出したキャラクターが自分の手を離れて勝手に動き出すことさえ、珍しくもなんともない。
「だから貴博さんは、本当に舞台の上に立っているだけでいいんです」
ヒロインの頭の中にしか存在しない男だから、例えば、台詞を覚えられずに他の登場人物と会話が噛み合わなくなったとしても構わない。ただし存在感は誰よりも必要なので、華のあるイケメンがぴったりというわけだ。
「でも、何もしなくていいって言われても」
「初対面の人間に囲まれて、それだけ堂々としていられたら上出来ですよ」
すらりと長い脚を組んで腰掛ける姿は、一時間でも見ていられる。あとは奈央子が一方的に話し掛けるだけでも成立するよう演出プランを立ててある。
「上出来ならもっと何かしてみたいじゃないか」
「……え、やってくれるんですか?」
私の表情が期待に溢れていたのだろう。慌てて勇也さんが割って入る。
主人公の妄想が生み出した……なんて聞くと少々イタく感じるかもしれないが、小説を書く彼女にとって妄想でキャラクターを作ることなど日常茶飯だ。自分が生み出したキャラクターが自分の手を離れて勝手に動き出すことさえ、珍しくもなんともない。
「だから貴博さんは、本当に舞台の上に立っているだけでいいんです」
ヒロインの頭の中にしか存在しない男だから、例えば、台詞を覚えられずに他の登場人物と会話が噛み合わなくなったとしても構わない。ただし存在感は誰よりも必要なので、華のあるイケメンがぴったりというわけだ。
「でも、何もしなくていいって言われても」
「初対面の人間に囲まれて、それだけ堂々としていられたら上出来ですよ」
すらりと長い脚を組んで腰掛ける姿は、一時間でも見ていられる。あとは奈央子が一方的に話し掛けるだけでも成立するよう演出プランを立ててある。
「上出来ならもっと何かしてみたいじゃないか」
「……え、やってくれるんですか?」
私の表情が期待に溢れていたのだろう。慌てて勇也さんが割って入る。
