勇也さんは真顔で自分を指し示した。
「映像は専門外だけど、今は素人が一から編集覚えてネットで公開できる時代だもんな。あ、今までの舞台の映像も記録として残してあるから、アーカイブ配信とかもやってみればいいんじゃない? 定点撮影だからちょっと見づらいだろうけど、物は試しということで」
 思案顔の彼は明日からでも映像編集の勉強を始めてしまいそうに見えた。
 きっとものすごくありがたいことを言われているけれど、私が話したかったのはホントにそういうことだっけ……?
「二人ともいったい何の話をしてるんですか?」
 先程まで黙って聞いていた奈央子が、唐突に口を開いた。
「何って深雪が本気で脚本家を目指すって――」
「深雪さんが人妻になっても勇也さんが二人で映画撮りたいっていうなら勝手にやってればいいですけど、私は御免ですよ。カフェオレを巻き込まないでください」
 その語気の強さに驚いた。彼女は少々怒っているようだった。
「深雪さん、貴博さんと結婚するんですよね?」
「うん……たぶん」
「どうして決め切れてないんですか? 二人で納得いくまで話し合うんじゃなかったんですか?」
 奈央子にせっつかれ、貴博さんの実家で彼の母親から反対された顛末まで全て打ち明けてしまった。
「少なくとも私たちの見解は一致したし、創作活動に直接関わるところじゃないから、さっきの説明では省いたんだけど」