スカウトしたはずのイケメン御曹司からプロポーズされました

 最初に結婚という言葉を発した時には目を見開いていた勇也さんだが、余計なことには突っ込まない。私がそうしてほしいのが伝わったようで、本当にかけがえのない舞台監督だと思った。
「だって私、プロを目指すんですよ?」
 現段階で私が突き進めるプロ脚本家への道は、大きく二つあると思っている。
 一つはシナリオの公募に片っ端から挑戦していく王道のコース。たとえ箸にも棒にも引っ掛からずにお蔵入りの山が築かれたとしても、書くこと自体がスキルアップにつながるし、手持ちの脚本が増えていくことは今後の糧になるはずだ。
 しかし、書いた脚本をすぐさま舞台にしてもらい、演出も役者も経験してきた私が「書くだけ」の活動を続けていくのは正直しんどい。だからもう一つの道として、自主制作でも自分の作品を公開していくことは必須だし、これからはもっと戦略的に行わなければならないと思っている。
「劇団カフェオレは趣味と割り切っているメンバーがほとんどだし、演劇はどうしても発信力が弱いんです。だからまずは、映像作品を作れるようになりたくて」
「つまり、次の企画は舞台じゃなくて映画を撮ろうって話?」
「え?」
「深雪がプロを目指して映画を撮ると知ったら、目の色変えて手伝わせてくれって言い出す奴がいくらでもいるよ。少なくともここに一人」