僅かに和んだ空気は、即座に切って捨てられた。代わりに文乃さんが嬉々としてこちらを睨みつけていた。
「そうです、そうですよ。こんなふざけた婚約者がいてたまりますか!」
先程よりも語気が強い。夫の言質が取れたことで、遠慮は無用と思ったようだった。
「貴博、面白い方だというならお友達になさい。それなら私も認めますから」
……いや、ただの友達なら親の許可なんて要らないのでは?
そう思うのに反論できないのは、私の常識が篠目家の常識とは限らないからだ。貴博さんが幼少より叩き込まれた帝王学の中に「付き合う人間は選べ」という項目があったとしても不思議はないし、自分の興味だけで取捨選択しようとする息子の軌道修正を文乃さんが必死に行ってきたことはもはや火を見るよりも明らかだった。
「何で俺の友達までお母さんに認めてもらわないといけないの?」
だから貴博さんがそう言って顔をしかめた時、私は情けなくも安堵した。
ただ、次の言葉を耳にした際は逆に少々肌が粟立った。
「俺は結婚相手だってわざわざ認めてもらう必要はないと思ってる。でも家族になるんだし、深雪も気にしてるからきちんと挨拶だけはしておこうと思ったわけで。けどもう紹介も済んだから、お母さんが反対しようがさっさと籍でも式でも――」
「ダメです!」
「そうです、そうですよ。こんなふざけた婚約者がいてたまりますか!」
先程よりも語気が強い。夫の言質が取れたことで、遠慮は無用と思ったようだった。
「貴博、面白い方だというならお友達になさい。それなら私も認めますから」
……いや、ただの友達なら親の許可なんて要らないのでは?
そう思うのに反論できないのは、私の常識が篠目家の常識とは限らないからだ。貴博さんが幼少より叩き込まれた帝王学の中に「付き合う人間は選べ」という項目があったとしても不思議はないし、自分の興味だけで取捨選択しようとする息子の軌道修正を文乃さんが必死に行ってきたことはもはや火を見るよりも明らかだった。
「何で俺の友達までお母さんに認めてもらわないといけないの?」
だから貴博さんがそう言って顔をしかめた時、私は情けなくも安堵した。
ただ、次の言葉を耳にした際は逆に少々肌が粟立った。
「俺は結婚相手だってわざわざ認めてもらう必要はないと思ってる。でも家族になるんだし、深雪も気にしてるからきちんと挨拶だけはしておこうと思ったわけで。けどもう紹介も済んだから、お母さんが反対しようがさっさと籍でも式でも――」
「ダメです!」
