「電源切れば良い」
「いやいや有り得ないでしょ?」
「じゃあ寝室のクローゼットに入れておこう」
「そこまでしなくても良いから!」

いつものやり取りをしつつ瀬名は愛おしそうに私のお腹を擦る

「この子に万が一の事があったら…」
「無いから!この間見たでしょ?まだ豆粒ほどだから」

先週分かった瀬名と私の新しい家族の誕生。
瀬名の異常なほどの溺愛が始まり色々と心配で仕方ないらしい。

「ショーとか凄く大変だったから貧血起こしたんだろう。たまには言う事聞いてくれよ」

軽い悪阻と食欲不振そして仕事の忙しさが一気に押し寄せて2週間休養を取る事になった。

「まあまあ休み明けには安見に名字変更するから機嫌直して?」

ずっと瀬名が懇願していた名字の変更を新しい家族が宿ったと分かり変える事にした。

「はぁ〜。俺は奏に弱すぎる。あっ、お手伝いさんの件だけど」

「必要ありません!」

これも悪阻で食事を作るのが困難になるのを予想して瀬名が提案して来た話で私は反対してる。

他人にウロウロされる方がストレスが溜まりそうでどうしても頷けない。

「そんなに俺の考えダメ?無理をさせたくないんだ」

私を思って考えてくれてるのは分かる…
これは仕方ないかな…

「分かったよ。私の仕事が始まったら宜しくお願いします」

居ない時間なら私にもストレスにならない。
私の返事に嬉しそうにまたお腹を撫でる。

「今年中に会えるな〜。元気に産まれてくれれば良いから」

元々ぽっちゃりなお腹に顔を寄せて話しかけてる。

仕事は忙しいはずなのに出来るだけ早く帰宅して家事を手伝うようになった瀬名は元々器用だった事もあって料理の腕も上げてきた。

「瀬名…いつもありがと」

撫でた手はお腹に添えられたまま私の膝に頭を乗せて寝息を立ててる。

2年間は辛かったけど結果その時間は必要だったのかも知れない。
最近は良かったと思えるようになった。

「う…ん…」

寝息が寝言に変わったのが分かる。
瀬名を覗き込むと気持ち良さそうに眠りを深くした瀬名の幸せそうな寝顔。

「凄く幸せ」

口に出してみて実感が倍になる。
きっとこれからも喧嘩をして仲直りして人生を共にするんだろう。

寝顔見てると私もつられて目を閉じた。