神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

―――――…全く、大変なことになった。

相棒のベリクリーデと一緒に…と言うか。

ベリクリーデの引率をして、地方の任務から帰ってきたのが今日の午後。

で、帰ってきて早々、俺とベリクリーデはこの件を知らされた。

聖魔騎士団魔導部隊隊長、シュニィ・ルシェリートの失踪を。

失踪…じゃなくて、誘拐と言った方が正しいだろうな。

あのシュニィが、自分から家出するとは思えない。

少なくとも、こんな風に俺達に迷惑を掛ける形で家出するはずがない。

つまり、何者かに連れ去られた…あるいは、何者かに脅されてついていったんだろう。

気になるのは、エリュティアが辿ることの出来る「痕跡」が全く残っていないという点だ。

エリュティアの探索魔法を躱せるなんて、一体何者だ?

俺だって、この国でエリュティアに見つけられずに姿を眩ませ、と言われたら頭を抱えるレベルなんだぞ。

どうやらシュニィを連れ去った輩は、只者ではないようだ。

…まぁ、聖魔騎士団の副団長を連れ去るくらいなのだから、ハナから只者じゃないのは分かってるが。

妻を連れ去られたことで、荒れに荒れているアトラスの為にも。

そして、俺達聖魔騎士団魔導部隊の大隊長の上司を助け、俺達が俺達である為にも。

何としても、シュニィを見つけなければならなかった。

…出来れば生きた状態で見つけたいんだが、こればかりは保証書をつける訳にはいかなかった。

シルナ・エインリーは敢えて口に出しはしなかったが、内心分かっているはずだ。

誘拐の目的が身代金だったら、可愛いもんだ。

あるいは、シュニィを人質にして交換条件を要求したりな。

それくらいなら別に構わない。交渉次第でシュニィを取り戻すことは可能だ。

…だが、誘拐犯の目的が、シュニィの命そのものだったら?

今頃シュニィは、この世の人間ではなくなっている可能性だってあるのだ。

考えたくない、最悪の状況だけどな。

…やめよう、このようなことを考えるのは。

まだ死体を見た訳じゃないんだから、生きていると仮定して動くべきだ。

シュニィだって、まだ生きているのに、死んだものと諦められるのは不本意だろう。

諦めるのは、シュニィの死体を見たその瞬間で良い。

それまでは、希望を捨てずに最善を尽くすべきだ。

…さて、そうと決まれば。

俺達も、周辺住民への聞き込み調査に協力しよう。

…と、思っていたのだが。

「おい、ベリクリーデ。お前も一緒に外に…」

「よし、行こうジュリス」

「…何処にだよ?」

今日のベリクリーデは、やけに張り切った様子だった。

お前、ルイーシュと違って何にでも乗り気で、やる気があるのは良いところなんだけどな。

そのやる気を、もっと真っ当な方法で活かして欲しい。