神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…豆とイワシを買ってきた、とベリクリーデは見せてくれたが。

さっきも言ったけど、豆もイワシも節分アイテムの一つではあるが、一般的には恵方巻きの具材にはしない食べ物だから。

豆は煎ってそのまま食べれば良いし、イワシは塩かけて焼いて食べようぜ。

それが一番美味しいって。多分。

…しかも、ベリクリーデが買ってきたのは。

「…いや、これ豆って…。…小豆(あずき)じゃん」

「えっ?」

そりゃ、小豆も豆だけども。

節分用の豆ではないな。

「これじゃないの?豆、って書いてあるよ?ちっちゃい豆」

「これはあずきって読むんだよ。和菓子の中にあんこが入ってるだろ?あれだ」

「…恵方巻きの材料じゃないの?」

「恵方巻きの材料じゃないよ…」

何故そうだと思ったのか。パッケージに豆って書いてあったからか?

やる気満々なのは良いが、お使いくらいはちゃんとしてくれ。

「…買ってきたものは仕方ない。この小豆は、後で煮て、お汁粉でも作ろうか…」

ベリクリーデじゃないけど、食材を無駄にするのは俺も嫌だからな。

これはこれで、ちゃんと美味しく頂くよ。

しかし。

よく見たら…間違いは、小豆だけではない。

「それから、こっちのイワシも…」

「うん、イワシだよ」

「これはシシャモだ」

「えっ?」

えっ、じゃないんだよ。えっ、じゃ。

買う前に気づいてくれよ。大きさが違うだろ、大きさが。

せめて間違えるなら、アジと間違えてくれよ。

似てないじゃん、イワシとシシャモ。

「これを挟むんじゃないの?」

「…挟まないよ…」

冷静に考えてみてくれよ、ベリクリーデ。

お前さっきから、豆やイワシを恵方巻きに入れるって主張してるが。

お前、豆とイワシの入った恵方巻き、食べたいと思うか?

俺は嫌だね。

酢飯の匂いとイワシの匂いが混じり合って、想像するだけで不味そうだ。

「…仕方ない。このシシャモは後で、みりん干しにするか…」

これも、無駄にするのは良くないからな。

後で調理して食べるよ。それで良いだろう。