実際のところ、それで何か問題が解決した訳ではなかった。

俺達がやったのは、謂わばその場しのぎ。

マシュリの言った通り、あの神竜…バハムートの長は、契りとやらを違えたマシュリを許さないだろう。

そんなマシュリを庇っている俺達のことも、許さないだろう。 

今度いつ、また冥界から現世にやって来て。

今度は仲間を引き連れてきて、俺達をまとめて、竜の炎で焼き尽くさんとするかもしれない。

と言うか…多分、そうなるだろう。

勿論、みすみすやられっぱなしになるつもりはないけれど。

こうして俺達はまたしても、余計な敵を増やした訳だ。

こんなことばっかりだな、俺達。

仲間を守る為に、色んなところに敵作ってばっかだ。

でも、後悔は全くしていないのだから不思議。

さて、それはともかく。

俺は宣言通り、放課後までにマシュリを学院に連れ戻すことに成功した。

マシュリは、「僕はもう学院には居ない方が…」とか何とか呟いていたが。

全部聞こえなかったことにして、無理矢理連れて帰ってきた。

俺はマシュリに、何も聞かなかった。

俺だけじゃなくて、シルナもイレースも天音もナジュも、令月とすぐりも。

いや、ナジュは心を読んで知っているから、聞く必要がないだけかもしれないけど。

誰も、マシュリに「あれはどういうことか」とは聞かなかった。

何で一人で、神竜の長と対峙していたのか、とか。

マシュリが破った契りというのは何なのか、とか。

そもそも、何でマシュリが神竜族の血を引いているのかとか…。

マシュリ自身が話したいなら、聞くけど。

そうじゃないなら、こちらから質問するつもりはなかった。

俺にとって大切なのは、マシュリが俺達の仲間でいてくれること。これだけだ。

それ以上に大切なことなんて何もない。

それに…言わなくても、大体想像はつくしな。

わざわざ尋ねる必要はない。

それよりも、俺にはもっと重要なことがある。

何かって?

…決まってるだろ?

何度言い聞かせても、何度言い聞かせても…学院から脱走を繰り返す、この脱走猫に。

どうやって罰を与えてやろうか、ということである。

それはそれ、これはこれだからな。