…そう、平和。

こうして俺達が今日、呑気にお疲れ様会…ならぬ。

シルナ主催のチョコパーティーを開くことが出来ているのは。

無事に決闘に勝利し、ルーデュニア聖王国に平和を取り戻したからである。

大変だったんだぞ、帰ってからの三日間も。

決闘に負けてヤケを起こしたナツキ様が、港に待機しているアーリヤット国軍を動かし。
 
ただちにルーデュニア聖王国を攻撃して、戦争が始まるんじゃないか。

そう危惧していた俺達だったが。

意外なことに、ナツキ様は聞き分けが良かった。

俺達がルーデュニア聖王国に戻ってきたときには、我が物顔で港を囲んでいたアーリヤット国軍は、自分の国に撤退した後だった。

これには拍子抜けだった。

更に、その後のアーリヤット皇国の動きも。

約束通り、フユリ様に会いに来るよう要請したところ、ナツキ様は今のところ、素直に応じているそうだ。

この調子なら、近いうちにようやく。

フユリ様とナツキ様の対面が、現実のものになりそうだった。

文句なしの大勝利である。

ようやくホッと一息ついた俺達は、今日、こうして。 

遅れ馳せながら、決闘お疲れ様会を…。

シルナの念願のチョコパーティーを開催した次第である。

いやぁ、感慨もひとしおだな。

ついこの間まで、幻の世界で悶々と思い悩んでいた頃が思い起こされる。

シルナが目の前に、このイーニシュフェルト魔導学院の学院長室にいる。

掃除機並みにチョコ菓子を貪っているのは別として。

そこにシルナが居るというだけで、俺は自分が驚くほど安心しているのを実感した。

多分、シルナにとってもそうなんだろうと思う。

だからこそ、何も考えずにチョコ菓子貪っていられるんだろうし。

平和ってのは尊いもんだな。毎回思うけど。

と、俺が平和の有り難さを噛み締めているところに。

「このまま大人しくしてくれてたら良いね、アーリヤット皇国」

「そーだね。懲りてくれたらいーけど。そう簡単に懲りそーな顔してないもんね」

令月とすぐりが、容赦なく水を差してきた。

…言うなって、お前らは。そういうことを。

気分が台無しだよ。

そりゃまぁ…令月とすぐりの言うことも分かるよ。

「あの」ナツキ様だもんな。

そう簡単に引き下がるとは思えない。

また何か企んでる…という線も、考えられなくもない。

が、今日くらいは…全部忘れて、素直に喜んでも良いのでは?

うん、そうだ。そういうことにしよう。