「さぁさぁ皆、たくさん用意したから、好きなだけ食べてね〜」

この決闘お疲れ様会、とやらを企画したのは、勿論シルナである。

そして、シルナが用意した祝いの席と言えば、当然ながら。

「凄いね、これ全部チョコなの?」

「チョコ菓子って、こんなに種類あるんだ…。ケーキとマフィンとクッキーくらいしか知らなかったよ…」

「世界は広いんだなって思うよね」

お疲れ様会に招待された吐月達が、テーブルの上に整然と並べられた皿の数々を見て、思わず舌を巻いていた。

そう思うのも無理はない。

テーブルの上には、これでもかと言うほど食べ物が並んでいた。

一体どんなご馳走が…と思ったら。

全部、チョコ菓子。

ザッハトルテ、ガトーショコラ、フォンダンショコラ、チョコクッキーにチョコサブレ。

チョコサラミにチョコアイス、チョコパウンドケーキ等々。

極めつけは、とくとくと熱いチョコレートを噴き出す、巨大なチョコフォンデュ。

用意したのは、勿論シルナである。

ルーデュニア聖王国に帰ってきてすぐ、馴染みのお菓子屋さんに頼んで、用意してもらった。

それもこれも、この日のお疲れ様会の為である。

「あ〜美味しっ。こっちも美味しい!このチョコアイスなんて最高!」

シルナは招待客そっちのけで、テーブルいっぱいのチョコスイーツを貪っていた。

すげー勢いで食ってる。掃除機か? 

「…」

これには、招待客であるルーデュニア聖王国代表団も無言。

ただ、ベリクリーデだけが。

「もぐもぐ。これ美味しいね、ジュリス」

「あ、うん…」

チョコドーナツを口いっぱいに頬張って、もぐもぐ食べていた。

ベリクリーデは大物だよ。

腕、もう治ったのかな?

「…このパンダ学院長…。白と黒じゃなくて、茶色一色になるんじゃないですか?」

イレースの嫌味も、シルナの耳には届いていないようで。

ただひたすら、変わらない吸引力でチョコスイーツを貪っていた。

しばらく放っておこうぜ。あれは止めても止まらんだろ。

まぁ、でも…気持ちは分かる。

多分シルナも幻の世界で、一週間の間針のむしろ状態で過ごしたんだろう。

俺と同じように。

当然その間、こうやって大好きなお菓子を口にすることもなかったはずだ。

それに、決闘のことやらアーリヤット皇国との揉め事やらで、しばらく落ち着かない日々が続いていたし…。

その反動なんだと思うよ。

ようやく平和が戻ってきたのだから、今日くらいは羽目を外しても良いだろう。

しかし。

「言うまでもないことですけど、この山のようなチョコ菓子の代金は、全部学院長の懐から出してもらいますからね」

イレースは、こんなときでも容赦なかった。

財布の紐が緩むってことがないもんな、イレースって。偉いよ。