「…イレース、天音も同じ意見か?」

「そうですね」

「…うん。僕も」

イレースと天音も、他の皆と同じように頷いた。

「この世界が正しかろうと間違っていようと、私は私の目の前にある、やるべきことをやるだけです」

実にイレースらしい意見である。

結局、そうするのが一番正しいのかもな。

どんな世界だろうと、今自分の目の前にある正しいことをする…。

更に、天音も。

「元の世界に帰って…結果的に大勢の人が傷つくのなら…。例え間違った世界だとしても、僕はここに居る方が良いと思う」

「…そうか」

ここに居れば、誰も傷つかないもんな。

誰も不幸な目には遭わなくて。

その通りだ。何もかも…お前達の言う通りなんだ。

言う通りなんだって…分かってるのに。

…満たされない。俺だけは。

皆ここに居れば幸せで、不幸な過去なんて何もなくて。

それが例え夢なのだとしても、ハクロもコクロに見せられた幻に過ぎないのだとしても…。

確かに皆、ここで幸せに暮らしている。

仲間達がこんなに幸せに生きているのに、どうして俺一人だけが必死に、元の不幸な世界に帰りたがっているのか。

その理由は簡単だ。

「…シルナ…」

俺は、その名前を呟いた。

お前がここに居てさえくれれば、俺は一生、幻覚を見たままこの世界で生きていっても良かった。

お前さえ…ここに居てくれれば…。

「…俺は…一体、どうしたら良い…?」

俺が選ぶべき道は、結局のところ二つだけだ。

仲間達の幸福の為に、シルナを諦めるか。

…仲間達を不幸にしてまで、シルナの居る世界に戻るか。

そんなの…簡単に決められるはずがなかった。