神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「…柿の種、食べたかった…」

「そんなしょんぼりするなよ…。また買ってくれば良いだろ?」

「自分で育てた柿の種を食べたかった…」

「…我儘かよ…」 

…しょんぼりしてるベリクリーデは、可哀想だが。

…そろそろ、顔出してみるかな。

「…ジュリス、ベリクリーデ」

「わっ、びっくりしたー」

突然現れた俺に、びくっとしてこちらを振り向くベリクリーデ。

一方、ジュリスは。

「あぁ、さっきから誰か見てるなと思ってたけど、あんただったのか」

どうやら、立ち聞きされていることに気づいていたらしい。

悪いな。盗み聞きするつもりはなかったんだが。

「どうかしたのか?」

「…いや…。…二人共、なんつーか…平和だなと思って」

「何だ?それ…嫌味か?」

そういう意味じゃなくてさ。

「お前達は、あんまり変わらないなと思って…」

「…?その含みのある言い方は何だよ?」

元の世界のジュリスとベリクリーデも、この世界の二人と似たようなことやってそうだなって。

アイスの実とか植えて、「芽が出ないなー」って言ってそう。

ベリクリーデなら有り得る。

「ましてや、ベリクリーデは…決闘で腕に大怪我してたのに、すっかり治ってるし…」

「はぁ…?決闘って何のことだよ?」

ジュリスはジュリスで、決闘のことを全然覚えてないし…。

「ジュリス、お前いつの間に、ベリクリーデに抜刀術なんか仕込んだんだ?」

あれ、めちゃくちゃ格好良かったけど。

ベリクリーデはいかにも…教えても、習得するのに時間がかかるタイプに見える。

それなのに、決闘の場であんなに鮮やかに抜刀術を決めていた。

普段から、ジュリスに仕込まれてたんだろう。

…しかし。

「…??意味分かんねぇんだけど。俺がいつ、ベリクリーデに抜刀術なんか教えたんだ?」

どうやらこの世界のベリクリーデは、ジュリス直伝の抜刀術は使えないらしい。

「そもそも。こいつが抜刀術なんか使えるはずないだろ?こんな不器用なのに」

「失礼な。私だってやれば出来るよ、ジュリス」

「嘘つけ。本当か?」

「勿論。バット術でしょ?バットくらい余裕で振り回してあげるよ」

「ほらな、全然分かってないじゃん。無理だ」

…ジュリスとベリクリーデは、世界が変わってもジュリスとベリクリーデのまんまだな。

ちょっと安心した。

あとは…あの質問をするだけ。

「なぁ、二人に聞きたいことがあるんだが、良いか?」
 
「へ?何?」

「どうしたんだよ?改まって」

俺は、一番聞きたかったことをジュリスとベリクリーデに尋ねた。

元の世界とあまり変わらない二人なら、もしかして、と淡い期待を持って。

「ジュリスとベリクリーデは、シルナ・エインリーを覚えてるか?」

「…?シルナ…?誰のことだ?」

「さぁ、知らない…」