神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「…仲、良いんだな。家族」

他に言うべき言葉が見つからなくて、俺はそう呟いていた。

「ん?あぁ、まぁ…そこそこな」

仲が良いとはっきり認めるのは照れ臭かったのか、キュレムは頭を掻きながら濁した。

そこそこね。

両家で集まってホームパーティー開くくらいの仲を「そこそこ」だと表現するなら。

元の世界のキュレムとルイーシュの家族は、「壊滅状態」と表現するのが妥当だろうな。

元の世界…か。

俺はずっと、自分の知っている世界のことを「元の世界」と呼んでるが。

果たして、俺の知るあの世界は…本当に「元の世界」なのだろうか。

変わり果てた仲間達の姿を見ているうちに、段々自信が持てなくなってきた。

「ルイーシュも、家族と仲良いんだな?」

「…?何でそんなこと聞くんですか?」

「…いや…ちょっと気になっただけだよ」

「別に、仲…悪くはありませんけど。心配には及びませんよ」

そのようだな。

この世界のルイーシュの家族は、ルイーシュが一度挫折したからって、彼を見限ったりはしなかったのだろう。

共にルイーシュを支え、励まし、ルイーシュが再び立ち上がれるまで守った。

素晴らしい家族じゃないか。

…羨ましい。

「そういう訳だから、俺達これから、ホームパーティーの買い出しに行かなきゃならんのだわ」

と、キュレム。

あぁ、さっきからそう言ってたな。

「良かったら、羽久も参加する?なんか暇そうだし。飛び入りも全然OKだけど」

俺まで、ホームパーティーのお誘いを受けてしまった。

その気持ちは嬉しいし、元の世界であれだけキュレムとルイーシュを傷つけた二人の家族が。

この世界では、果たしてどのように変わっているのか、実際にこの目で見てみたいという気持ちはある。

…でも、そんなことしてる場合じゃないだろうな。

「ありがとう。でも、遠慮しておくよ」

「そうか…。別に遠慮しなくても良いんだけどな」

「分かってる。だけど、俺…まだ他に用事があるから」

そっちを片付けないことには、落ち着いてホームパーティーなんて気分には、とてもなれない。

「…あ、そ…。まぁ、そういうことなら無理には誘わないよ」

そうしてくれると有り難い。

「そんじゃ、俺達そろそろ行くわ。ほら、さっさと動けルイーシュ」

「もー…。仕方ないですね。おんぶしてくれたら行きますよ」

「甘えんな」

とか言いながら、結局おんぶして連れて行ってやるのだから、キュレムは優しい。

だが、買い出しに行く前にもう一つ。

「なぁ、二人にもう一つ聞きたいことがあるんだが」

俺は、一番聞きたかったことをキュレムとルイーシュに尋ねた。

「二人共、シルナ・エインリーを覚えてるか?」

「は?誰それ?」

「何者ですか?羽久さんの知り合い?」