神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

次に会ったのは、吐月。 

「吐月…。久し振りだな」

「あ、羽久さん」

聖魔騎士団魔導部隊の制服を着て、大隊長であることを示す腕章を嵌めて。

どうやら、これから任務に出るようだ。

長話は出来そうにないな。

「これから任務なのか?」
 
「そうだよ。羽久さんは…何でここに?学院のお使い?」

「いや…そうじゃないよ」

ただ、お前達の様子を見たかっただけだ。

「任務って…。今日はどんな任務なんだ?」

俺のことじゃなくて、吐月のことを聞きたかった。

すると。

「えぇと、今日の任務は…」

「さては、俺様の出番だな!?」

吐月の言葉を遮るようにして。

ぴょこんと飛び出してきて、吐月の頭の上に着地したのは。

皆さんご存知、吐月の契約召喚魔であるベルフェゴールであった。

お前は相変わらず、吐月と一緒に居るんだな。

ちょっと安心したよ。

「どんな敵でも、俺様の手にかかればイチコロだ!」

そのちっこい身体の、何処に手があるんだ?

という正論のツッコミは置いといて。

「張り切ってるところ悪いけど…今日はそういう任務じゃないよ」

吐月は、頭の上のベルフェゴールに言った。

「え?そうなのか?」

「昨日も説明しただろ?王都の街外れの山で、砂防工事が行われる予定なんだけど…。工事の途中で土砂崩れが起こる可能性があるから、万一に備えて魔導師に待機していて欲しいって頼まれたんだよ」

「…」

…特に、イチコロする必要のある敵が出てくる任務じゃなさそうだな。

まぁ、そんなことだろうと思った。

そういう任務の前にしては、緊張感も焦燥も全く感じられなかったから。

「ちぇっ…。俺様が格好良く活躍する機会がないじゃねぇか…」

「何言ってるんだよ…。誰も傷つかないんだから、良いことだろ?」

そうだな。

…すると、そのとき。

俺は、目を疑うような光景を目撃することになった。

吐月の周囲に、思わず背筋が冷えそうな、氷のベールが広がった。

驚く暇もなく、吐月の横に、能面を被った白い着物の女が現れた。

その姿はさながら、お伽噺に出てくる雪女であった。

「…失礼、お話し中に」

「あぁ、雪刃(ゆきば)…どうかした?」

吐月は特に気にすることなく、雪女に向かって話しかけた。

雪刃…だと?

それは、吐月を何千年にも渡って苦しめ続けた、悪魔のような魔物の名前だ。