神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…だけど。

リリスと話してるときのナジュ。リリスを見つめているときのナジュ。

また、逆にナジュと話してるときのリリス。ナジュを見つめているときのリリス。

二人の幸せそうな顔と言ったら。

俺の記憶にあるナジュの笑顔とは、全く違っていた。

ナジュと初めて会ったときの、絶望と狂気に満ちたあの表情を思い出す。

まるで同一人物とは思えない。

こんなに穏やかに笑う人が…。

リリスと一緒に生きていた頃のナジュは、こんな風に笑っていたのか。

…幸せだったんだろうな。

それなのに、俺の記憶にあるナジュは、その幸せとはかけ離れたところにいて…。

…そんなナジュに、「この世界は間違っている」と訴えて、分かってもらえるだろうか?

「さぁ、そろそろ下校時刻ですし、今日はこの辺にしておきましょう」

「…はーい…」

「それじゃあ、ナジュ先生。リリスさん、また明日」

「うんうん、また明日ね〜」

リリスは、生徒達にひらひらと手を振り。

帰っていく召喚魔導師サークルの生徒達を見送った。

…そして。

「…さっきから、どうしたんですか?盗み見なんて、あなたらしくもない」

「…ナジュ…」

改めて、様子を見守っていた俺に、ナジュがくるりと振り向いた。

…言わないとな。

少なくともナジュにだけは、俺が本当のことを言っていると分かって欲しい。

この摩訶不思議な世界の謎を解き明かし、もとの世界に戻す為にも。

「…話したいことがあるんだ」

「…どうやら、そのようですね。…良いですよ、話さなくて。心を読めば分かるので」

あぁ、そうしてくれ。

今だけは、喜んで俺の心を読んで欲しい。

まさかこんな風に思う日が来るとはな。

「…」
 
俺の心を読んだナジュは、驚いたような、不気味なものを見るような表情を浮かべた。