神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

分からないのなら、仕方ない。

誰に聞いても分からない、むしろ俺の方がおかしなことを言っている…。

誰もシルナを知らない。学院にやって来た経緯も、まるでわざとシルナを省いたかのように書き変わっている。

誰もが、シルナを記憶から消そうとでもするように。

…でも、そうは行かない。

俺は決して、シルナを忘れない。

「…」

令月達は、戸惑ったような困ったような表情で、俺を見つめている。

変な奴に洗脳でもされたんたろうか、と思ってんだろうな。

それはこっちの台詞だっての。

…良いだろう。

少なくとも、俺が嘘をついている訳じゃないことを証明してみせよう。

「…なぁ、令月。すぐり」

「何?」

「ナジュは…あいつは何処にいる?」

ナジュに、俺の心を読んでもらおう。

そうすれば、少なくとも俺が嘘をついている訳じゃないと分かってもらえるはずだ。

俺の心を読むことで、俺の中にある本来の記憶を見てもらうのだ。

「ナジュせんせーなら、稽古場にいると思うけど。受け持ってるサークルの生徒達に、稽古つけてるはずだよ」

と、すぐりが答えた。

この謎世界(?)でも、ナジュは放課後になると稽古場に居座ってるんだな。

「受け持ってるサークル…。風魔法サークルだっけ…」

「?違うよ。読心魔法先生は召喚魔導師なんだから、受け持ってるのは召喚魔導師サークルだよ」

「…」

令月が、そう教えてくれた。

…風魔法サークルじゃないのか。

召喚魔導師…ナジュが。

それに、令月…今ナジュのことを「読心魔法先生」と呼んだ。

いつもなら、不死身先生と呼んでいたはずだが…。

つまり、この世界のナジュは…不死身ではない、ということなのか?

…会って確かめるしかないようだな。

「分かった。ちょっと…会ってくる」

「?一緒にコールラビ、植えないんですか?」

ごめんなツキナ。それはまた今度にしてくれ。

この不思議な異世界じゃなくて、本当の世界に帰ったら。

コールラビでもとうもろこしでも、いくらでも植えるの手伝うから。

俺は令月達を畑に残して、真っ直ぐに稽古場に向かった。