神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

ツキナと一緒に苗を運び、園芸部の畑に着くと。 

「来たぞー!隊員その1、その2!真面目に耕してるかーっ?」
 
「勿論だよ、ふっかふかの毛布みたいになってるよ」

「いつでも植えられるよ」

鍬を片手に、手拭いで汗を拭う令月とすぐりの姿は。

魔導学院の生徒ではなく、さながら農業学校の生徒といった風貌が板についている。

「何で羽久も一緒にいるの?」

令月が俺に気づいて、ツキナに聞いた。

「グラスフィア先生がね、一緒にコールラビを植えたいんだって!」

「へー。自分から進んで手伝ってくれるとは。羽久せんせーも園芸部に興味あるのかな」

…そういう訳ではないんだが。

でも、令月とすぐりを見つけられて良かった。

「令月、すぐり…お前達に聞きたいことがあるんだ」

「へ?何?とうもろこしのこと?」

「とうもろこしなら順調だよ。ほら、ほこ」

「違うっての」
 
何でお前らは、とうもろこしの生育状況に拘泥してるんだよ。

そうじゃない。

「シルナのことだ。…何処にいるのか知ってるか?」

「…」

「…」

俺が尋ねると、令月とすぐりは揃って顔を見合わせ。

「…シル菜?そんな野菜は育ててないよ?」

がくん、とその場に膝をつくところだった。

違う。野菜の名前じゃない。

新種の菜っ葉みたいに言うな。

「野菜じゃない。シルナ、人名だ。シルナ・エインリーだよ」

「はぁ、そんな人がいるの?」

「そんな人って…イーニシュフェルト魔導学院の学院長じゃないか!お前達が最初に、その、暗殺しに来た…」

「…」

「あ、いや…。…ごめん」

言ってしまってから、思わず謝ってしまった。

二人にとって、『アメノミコト』にいたときのことは思い出したくないだろうと思って。

いくらシルナの所在を聞く為とはいえ、うっかり口が滑ってしまった。

…しかし。

「…一体何の話?」

「暗殺だって。安っぽい漫画でも読んだの?」

令月もすぐりも、揃って首を傾げていた。

…まさか、令月とすぐりまでも。

この二人も、シルナを知らないって言うのか?