神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「…」

ちょっと、落ち着いて…一旦冷静になろう。

明らかに異常事態だけど、異常事態に焦って行動して、良い結果になるとは思えない。

まず落ち着こう。

「あの…羽久さん。さっきから大丈夫ですか?」

「シュニィ…」

心配そうな顔で、シュニィは俺の顔を覗き込んだ。

「何だか様子がおかしいですよ。何かありましたか?」

「…いや…」

何かあったかなんて、俺が聞きたいよ。

「夢でも見ていたのでは?」

と、イレース。

夢…。

どちらかと言うと…今のこの状況の方が、俺にとっては夢っぽいけど…。

念の為に、頬をつねってみる。

が、やっぱりちゃんと痛かった。

夢の中でほっぺたをつねると目が覚めるって、あれは迷信なんじゃないだろうか。

つねろうが転けようが、夢は夢だよ。

「疲れてるのかな?ちょっと…休んだ方が良いよ。さっきも眠ってたみたいだし…」

こちらも心配そうな顔をした天音が、そう言ってくれた。

「今日はもう授業もありませんし、ゆっくりなさってください。雑務があれば私達で片付けておきます」

シュニィが微笑んで言った。

その申し出は…大変有り難いのだが。

「…ごめん。ちょっと…気になることがあるから、行ってくる」

部屋に閉じこもって休んでいても、この状況が好転するとは思えない。

まずは、この世界が何なのか、本当に俺の夢なのか…それとも他の誰かの夢なのかを確認したかった。

「気になること、ですか?」

「あぁ。…大丈夫だ。確認したらすぐ戻るから」

「は、はい…」

納得行かなそうなシュニィを、学院長室に置き去りにして。

俺は、見慣れたイーニシュフェルト魔導学院の廊下を走った。