神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「えっ…」

「え?」

お互い、ポカンとして見つめ合ってしまった。

何言ってるんだろうって、多分お互い思ってる。

だけど、俺だって冗談言ってる訳じゃないんだ。

「シルナだよ…シルナ・エインリーだよ…!イーニシュフェルト魔導学院の学院長だ」

「が、学院長…?学院長は…私なんですが…」

いや、だからそれがおかしいだろ?

「イーニシュフェルト魔導学院の学院長は、創立以来一度も変わったことはないはずだ」 

学院創立のその日から、俺はずっとシルナが学院長を務める、このイーニシュフェルト魔導学院にいた。

その俺が断言する。シルナはこれまで一度として、学院長の座を他人に譲ったことはない。
 
例えシュニィが相手でも。

「イレースも、天音も!黙ってないで何とか言ってくれよ。シルナのこと、お前達だって知ってるだろ…!?」

お前達が学院にやって来たのは、シュニィにスカウトされたからじゃない。

紆余曲折、色々な事情と様々な経緯があってここに来た。

そしてその中心にはいつも、他ならぬシルナ・エインリーがいた。

シルナがいたから、イレース達もまた、ここにいるのだ。

それを忘れた訳ではあるまい。

…しかし。

「そ、そう言われても…。シルナさん…?って、誰のこと?イレースさん、知ってる?」

「いいえ。聞いたことのない名前ですね」

天音もイレースも、口を揃えてシルナのことなんて知らないと言う。
 
おかしい。こんなの、絶対におかしい。

シュニィが、天音が、イレースが、シルナのことを知らないなんて。 

シュニィがイーニシュフェルト魔導学院の学院長になってるなんて。ナジュが召喚魔導師になって、普通にリリスと喋ってるなんて。

こんなの、俺が知ってるイーニシュフェルト魔導学院ではない。

皆して俺を謀っているのでなければ、これは明らかな異常事態だった。

…そう、異常事態。

そのとき、俺は大切なことを思い出した。

「決闘…。そうだ、決闘!アーリヤット皇国との決闘はどうなったんだ…!?」

俺はついさっきまで、ミナミノ共和国にいたはずなのだ。 

ルーデュニア聖王国とアーリヤット皇国の命運をかけた決闘。

あの結果がどうなったのか確かめないことに、枕を高くしては寝られなかった。