神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

しかし、困惑している俺をよそに。

「そういえば、天音さんの親友…。…そのナジュさんはどちらに?」

「あぁ、彼なら…さっき、リリスさんと話してたよ」

え、リリス?

まだ真っ昼間なのに…ナジュの奴、精神世界でリリスに会ってるのか?

「本当に仲良いよね、あの二人。いつも楽しそうに話してるから、見てると何だか、こっちも嬉しくなるよ」

天音はそう言って笑った。

見てると…って、二人が会うのはいつも精神世界であって、俺達は見たことないはずなんだが…?

確かに、リリスのことを話しているときのナジュは、楽しそうではあるけども…。

「またですか…。生徒の前であれでは、教師として示しが付きません」

「まぁまぁ、良いじゃありませんか。契約召喚魔とあれほど仲の良い召喚魔導師は珍しいですよ。生徒の中にも、ナジュさんみたいな召喚魔導師になりたい、って言っている子はたくさんいますから」

イレースとシュニィがそんなことを言って、俺はまた内心首を傾げた。

…ナジュって、召喚魔導師だっけ?

そりゃ、昔は…故郷にいた頃は、召喚魔導師だったんだろうけど…。

でも…「例の一件」があって以降、ナジュはずっと…リリスとは会っていない訳で。

今だって…召喚魔導師としてリリスの力を行使することは出来ない。

あれは召喚魔導師とは言えないのでは…?

「全く、甘いですね。学院長として、もっと規律を重んじるべきです」

「う…。肝に銘じます」
 
イレースに軽く叱られ、子供のように照れ臭そうに微笑むシュニィであった。

…その様子は、さながら毎日繰り広げられている日常の1ページに迷い込んだようで。

まるで違和感を覚える光景ではない…のかもしれないが。

俺は違和感感じまくりだ。

だって、この場には足りないものがある。

決定的に…足りない者が。

「…シルナは何処にいるんだ?」

俺は、この場にいる皆に向かって尋ねた。

さっきから、ずっと気になっていた。

この部屋は、この机や引き出しや本棚は、全部シルナのもののはずだ。

イーニシュフェルト魔導学院の学院長は、シルナ・エインリーその人であるはずなのだ。

だから、イレースの持ってきた書類に目を通したり、サインをするのはシルナでなければならないのだ。

それなのに…どうしてここにシルナがいない?

皆、まるで…シルナの存在を忘れたかのように振る舞うんだ?

…すると。

「…シルナさん?…どちら様ですか?」

シュニィは、きょとんと首を傾げた。