神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

「俺は『HOME』に所属してはいるけど、皇王の命令は聞かないよ。面白ければやってみるけど、面白くないなら何もしない」

…適当過ぎる。

規律もクソもない。

でも…だからこそナツキ様は、ルディシアに声をかけたのだろう。 

ルディシアの興味を引くことが出来れば、ナツキ様は自分の手を汚すことなく、ルーデュニア聖王国を攻撃出来る。

もし万が一何かあったとしても、「皇王の命令ではなく、ルディシアの独断である」と言い訳することも出来る。

しっかり予防線を張ってから、行動に移した訳だ。

ルディシアの性格的に、興味をそそるようなことを言えば、ルディシアが勝手に動いてくれる。

そう踏んだからこそ、ルディシアに話を持ちかけた。

面白がったルディシアが、暇潰しがてらにイーニシュフェルト魔導学院を攻撃することを期待して…。

…こういうところを見るに、やはりナツキ様は馬鹿ではない。

むしろ、一端の策略家じゃないか。

自分の手は一切汚さずに、ルーデュニア聖王国に手出しするとは…。

万が一、ルディシアが捕まったとしても。

ナツキ様にとっては、忠誠心の薄い、扱いづらい部下を一人失っただけだ。

特に痛くも痒くもない。

そこまで計算して、今回の件を実行したのだろう。

…危うい人だ。

ルディシアはそれを理解しているのかいないのか、あっけらかんとして言った。

「その大魔導師は、口から火を噴いたり目からビームを出したりするんだって。あれって本当?」

「…だってよ、シルナ。目からビーム出せ」

「えっ、ちょ…それは無理…」

…ナツキ様よ。
 
ルディシアを焚き付ける為とはいえ…ちょっと噂の誇張が過ぎるぞ。