…さぁ、いよいよ決闘は三回戦。

結局、三回戦までやることになってしまったか。

両国、一勝一敗の状態で…この三回戦で決着がつく。

いや、俺は認めてないけどな。一勝一敗なんて。

客観的に見たら、どう考えてもルーデュニア聖王国が二連勝だよ。

「それでは、三回戦…最終試合を開始します」

全ては、この公正から程遠いジャッジをした、ミナミノ共和国の審判マミナ・ミニアルのせいだ。

この人はナツキ様に指示されただけで、個人的な悪意を持ってルーデュニア聖王国に不利なジャッジをしている訳ではないだろう。

それは分かってるけど、やはり恨まずにはいられない。

あんたが正義感に負けず、ちゃんと公平なジャッジをしてくれれば…。

今頃、ルーデュニア聖王国の大勝利で決闘が終わっていただろうに。

上手く行かないもんだ。

「アーリヤット皇国の代表を選んでください」

最終試合くらい、俺達の方から選ばせてくれても良いんだぞ。

さぁ、誰が出てくるやら。

ナツキ様としても、絶対に負けられない戦いとなる。

あんな卑怯な方法で、二回戦を「勝利」したのだから。

三回戦こそ鮮やかに、文句のつけようのない勝利を収めたいところだろう。

その為に、彼が選んだのは…。

「…ハクロ」

「こちらに」

横柄な口調でナツキ様が呼ぶと、長い白髪の女が彼の前にスッと現れた。
 
あの女…見覚えがあるぞ。

更に。

「コクロ、お前もだ」

「畏まりました、皇王陛下」

今度は、長い黒髪の女を呼んだ。

驚いたことに、コクロと呼ばれたその女は、ハクロと全く同じ顔だった。

ただ、髪の色と衣服の色が違うだけ。

何だ、あいつら…双子か?

片方は見たことがある。ルーデュニア聖王国の港に、くそったれな最後通牒を伝える為に、大群率いてやって来た大将だ。

片割れがいたのか…。

揃いも揃って…ナツキ様の忠実な犬であるらしい。

そんな卑怯者に仕えて、一体何が楽しいんだ?

いや、それよりも。

「どういうことだ?二人も…」

ナツキ様はハクロとコクロ、二人の人間を決闘の代表に指名した。

この二人は、二人で一人だから、とか言い出さないよな?

さっきの、マシュリの反則負けのことがあるから。

それくらいの身勝手は、当たり前のように言い出しそうじゃないか?

しかし、そうではなかった。

「その代わり、お前達からも二人選ぶ。最終戦は、二対二の決闘だ」

ナツキ様は、一方的にそう決めつけた。

…これは、まさかの展開だな。