神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…さて、話を戻すとしよう。

目の前にいるルディシアは、アーリヤット皇国皇王、ナツキ様の直属軍。

『HOME』とかいう軍隊の一員だと判明した。

前述の通り、ナツキ様とフユリ様の関係は最悪に等しい。

ナツキ様の直属軍の軍人が、ルーデュニア聖王国を…イーニシュフェルト魔導学院を攻撃した。

このことが明るみに出たら、両国の関係は冷え切っているどころではない。

事と次第によっては、戦争が勃発しかねない事態だ。

「ルディシア君。君は…ナツキ様の命令を受けてここにいるの?」

「…」

ルディシアは、黙ってシルナの顔を見つめた。

「ナツキ様に命令されたの?…私達を殺せと?フユリ様の命も…」

もしそうなら、俺達も落ち着いてはいられない…。

…と、思ったが。

「…命令されたとは言えないな。あの人は、そんな直接的な言い方はしないよ」

ルディシアが答えた。

…何?

「俺は『HOME』に所属していたけど、別に皇王に忠誠を誓ってた訳じゃない。単なる暇潰しだと思ってたし」

皇王直属軍の軍人が、単なる暇潰しとは。

忠誠心が行方不明なんだが、ナツキ様はそれで良いのか?

「ただ、皇王から話を聞いただけだよ」

「話って?」

「ルーデュニア聖王国に、イーニシュフェルト魔導学院っていう大きな魔導学院があって、そこには国内指折りの魔導師がいるって」

シルナのことだな。

「その魔導師は、大昔イーニシュフェルトの里?ってところの出身で、凄い大魔法を使うことも出来るって話でさ」

やっぱりシルナのことだな。

「皇王がそんなに言うなら、自分の目で見てみようと思っただけだ」

「…それだけの為に?」

「俺は退屈なんだよ。それに、アーリヤット皇国国内は治安が良過ぎてつまらない」

よその国に行けば、好き勝手暴れられるだろうって?

皇王直属軍の軍人がこんな体たらくで、本当に大丈夫なのか。