神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

おいおい。

この女、イルネとマシュリを間違えてないか?

逆だよ、逆。

「おい、あんたの目は節穴か?マシュリの勝ちだろ」

そこで蹲って、戦意喪失してる方がイルネ。

さっき竜に『変化』して、見事改造オルトロスを打ち破ったのがマシュリだ。

それなのに。

「間違いありません。勝者、イルネ・メルクリアス」

頑なに首を振って、マミナはそう主張した。

「はぁ…!?何処からどう見たら、このマッドサイエンティストが勝ったことになるんだよ…!?」

どう見ても、負けたのはイルネの方だろ。

ナツキ様にいくら渡されたのか知らないが、さすがにこの状況でイルネの勝利を宣言するのは苦しいぞ。

「正しく言うと…マシュリ・カティアの反則負けです。よって、イルネ・メルクリアスの勝利となります」

マミナ・ミニアルは、手前勝手な理屈を並べ立て、イルネが勝利した理由を説明した。

マシュリの…反則負け?

マシュリが反則したから、自動的にイルネの勝利ってことか?

意味不明だ。何だよ、その言い分は。

「あー…成程、そう来ましたか…」

マミナの心を読んだらしいナジュが、苦い顔でそう呟いた。

おい、どういうことだよ。俺にも説明してくれ。

「マシュリが…いつ、何の反則をしたって言うんだ…?」

「決闘が始まる前に言ったはずです。観客席を巻き込むような危険行為は禁止である、と」

「…!」

…危険行為、だってよ。

「…どれが危険行為なんだよ?」

「先程の、イルネ・メルクリアスを燃やそうとした炎です」

嘘つけ。

あれはイルネを燃やそうとしたんじゃない。言いがかりをつけるな。

あくまでマシュリは、改造オルトロスだけを狙っていた。

それなのに…あの攻撃を危険行為認定して、反則負けだと主張するとは。

信じられない。こじつけに等しい。

「…」

ナツキ様をちらりと見ると、してやったり、みたいな顔をしていた。

むっ…か、つくわぁ…あの顔。

イレースじゃないけど、脳天に拳骨食らわせてやりたかった。

あいつ、初めからこうするつもりで…。

忖度パワーを遺憾なく発揮して、無理矢理アーリヤット皇国を勝たせる算段だった訳だな。