神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

まず、一番に止めるべきは。

僕は真っ先に、鋭い爪の光る前脚をイルネに向けた。

「ひっ…!嫌ぁぁ!」

爪で引き裂かれることに怯えたのだろう。

イルネは頭を抱えて、その場にしゃがみ込んだ。

しかし、僕はイルネを引き裂くつもりはなかった。

そんなことをしても、誰も、何も報われない。

憐れなオルトロスの仇を取るだけのことだ。

そうではなく、僕が狙ったのはイルネの手元のカード。

バハムートの爪で引き裂かれた4枚のカードが、ただの紙くずとなって、はらはらと地面に落ちた。

途端、テグスに吊られていた改造オルトロスが、事切れたように崩れ落ちた。

…やっぱり、あのカードで操られてたんだ。

カードを破くなり、改造オルトロスは力を失って倒れた。

「あっ、あっ…!カードが…!」

イルネは手を伸ばして、地面に落ちたカードを拾おうとした。

だけど、もう遅い。

二度と、そのカードに手は触れさせない。

改造オルトロス共々、神竜の炎で焼き尽くす。

僕は深呼吸をするように、強く息を吸い込んだ。

口から吐き出したのは空気ではなく、熱い炎だった。

万物を焼き尽くす、竜の炎。

その炎に、4枚のカードと共に、改造オルトロスも包まれた。

断末魔の叫びをあげ、改造オルトロスは竜の炎に巻かれた。

「ああっ…!」

イルネには、力なく手を伸ばすことしか出来なかった。

…これで良い。

何もかも全て焼き尽くして、全てを浄化する。

イルネとナツキ皇王を巻き込まなかったのは、羽久達の恩義に報いる為だ。

彼らが、イルネ達の死を望んでいないことは分かっていたから。

殺す必要はない。

ただ、憐れなオルトロスを救えれば良い。

神竜の炎に焼かれた改造オルトロスは、ボロボロの灰になって消えた。

イルネの武器代わりであった4枚のカードも、今や紙くず同然だった。

自称最高傑作を、完膚なきまでに叩きのめされ。

イルネは戦意喪失し、呆然として膝をついていた。

彼女に、これ以上戦う気がないのは明白だった。

…どうやら、勝負はついたようだ。