神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

家…家か。

ようやく手に入れた、僕の帰るべき本当の家。
 
散々利用された『HOME』でも、僕を追放した冥界でもない。

僕の帰るべき…僕が居ても良い場所。

…そうだね。

死ぬことは怖くない。だけど…。

…死ぬなら、せめて少しでも心温まる場所で死にたい。

それが駄目なら、最後にもう一度、家に帰ってから死にたい。

「…」

…スクルト。

君の目に、僕の未来は何色に見えていたんだろう?

こうなることを、君は知っていたんだろうか。

羽久もシュニィも言った。僕の罪は僕のものじゃないと。

人間とケルベロスのキメラとして生まれたのは、僕が悪いからではないのだと。

そういう呪いをかけられた、祖先の末裔だから。

お前に罪はない、お前は悪くないと言ってくれた。

それは嬉しかった。肩の荷が下りたような気がした。

そう。だから、人間とケルベロスのキメラであることに対して、僕が罪悪感を覚えることはない。

でも、もう一つは。

僕の中に流れる、もう一つの魔物の血。

これは正真正銘、僕の罪。

先祖の呪いじゃなくて、僕が犯した、僕だけの罪。

決して言い逃れようのない、絶対に許されない大罪の姿。

…これまで、一度もこの姿に『変化』したことはなかった。

それをするときは、僕の運命が尽きる時だから。

でも…でも、一生に一度の罪を犯すなら、せめて大切な人を守る為にそうしたい。

どっちみち命を落とすなら、僕はもう一度…あの場所に帰りたい。

仲間達と一緒に、ただいまって言って帰りたい。

その後どうなったって、僕は何も後悔しない…。

「…分かった」

僕は、小さくそう呟いた。

そして、覚悟を決めた。

死ぬ覚悟じゃない。

今まで誰にも明かしたことのない…リリス様でさえ知らない。

正真正銘、マシュリ・カティアが犯した罪の姿に『変化』する覚悟だ。

「…呼び覚ませ、バハムートの血脈よ」

体内に眠っていた竜の血が、息を吹き返したように蠢き始めるのが分かった。