神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

―――――――…改造オルトロスに食いつかれた患部が…毒に侵された患部が、焼けるように痛む。

身体中に毒が回ってきているのか、手足が痺れ、視界が霞む。

段々、思考力も落ちているような気がする。

心拍数が急激に上がって、命の危機すら感じる。

冥界産の特別な毒だというのは、本当らしい。

放置すれば、このまま遠からず…それこそ、10分足らずで意識を失うだろうね。

果たして、意識を失うだけで済むだろうか。

そのまま毒に侵されて、命を落とす…かもしれないね。

それはそれで、悪くないような気もした。

解毒出来るならそうしたいけど、残念ながらその方法がない。

僕は多分、このまま死ぬだろう。

それは構わない。僕の運命だ。これが僕の辿る未来なのだ。

死ぬことは全く惜しくない。

…けど、犬死には御免だ。

せめて、目の前のマッドサイエンティスト…イルネを道連れに。

それも駄目なら、この改造オルトロスを道連れに、一緒に死にたかった。

彼を、この苦しみから解放してあげたかった。

そうすれば、何の意味もない僕の人生に、少しでも価値を与えられるんじゃないかと思った。

せめて最後に誰かを救ったなら、僕の命にも少しくらいは…価値があったと言ってもらえるんじゃないかって。

…なんて、それは思い上がりだよね。

どっちみち、この状況を打開する方法なんて、ない…。

「…」

…いや。

一つだけ…一つだけ、方法が…ない、訳ではない。

でも、駄目だ。あの方法じゃ、どっちにしても僕は…。

どうせ命を落とすなら、あの秘密だけは守りきって、

「そうそう、もう少し頑張って頂戴。あなたが死ぬところを見せて…」

「うるせぇぞ、このマッド女!お前はちょっと黙ってろ」

僕が、回らない頭を必死に回しているところに。

棄権を辞退した僕の判断にイルネは喜び、羽久はそんなイルネを罵って黙らせた。

そして羽久は、改めて僕の方を向いて叫んだ。

「マシュリ!この馬鹿、お前また自分を犠牲にしようとか思ってないだろうな!?」

…ぎくっ。

バレてる…。僕はそんなに分かりやすいだろうか?

「絶対許さないからな。決闘の勝敗なんかどうでも良いが、お前が死んだら絶対に許さないからな!」

…羽久…。

僕の為に、何でそんなことを…。

「生きて帰るんだ。お前の、俺達の家に。皆で一緒に帰るんだよ!」

…家。

その一言を聞いて、僕の心の中が揺り動かされた。