神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

…マシュリ…。

「もうたくさんだ。もう…これ以上は聞きたくない」

…同感だ。

多分どんなに話し合ったとしても、この女とは理解し合えないだろうからな。

このバケモノと化したオルトロスマリオネットを見て、威厳のある姿だと言えるような奴とは。

「…どうして?『HOME』にいた頃は、全然お喋り出来なかったから。ようやくこうして顔を合わせて、たくさんお話する機会に恵まれたのに…」

「僕は君と、決闘をしに来たんだ。雑談しに来た訳じゃない」

その通りだ。

「…そういえば、そうだったわね」

忘れてたのかよ。

自分の最高傑作とやらを見せびらかして、それで満足してたのかもしれないが。

今からその最高傑作は、破壊される運命だからな。

…罪のないオルトロスは、可哀想だけど。

でも、ここまで改造されてしまった以上、もう元には戻れないだろう。

元の姿には戻れない。それなら、もう…。

あのオルトロスに与えられるのは、せめて安らかな眠りだけだ。

「ふーん、仕方ないか…。じゃ、決闘に勝ったら、今度こそゆっくりお話させてもらえるわよね?」

「…下衆が」

「あなたに言われるとは、心外だったわ」

もっと言ってやれ、マシュリ。

その女は下衆どころじゃない。狂気じみた研究者…。

…そう、最早疑いようもない。

朝のミーティングで、マシュリが警戒対象として口にしていた、マッドサイエンティスト。

それは、このイルネ・メルトリアスのことだったのだろう。

成程、何処からどう見ても、見紛うことなくマッドなサイエンティストだよ。

頭がイカれてるにも程がある。

まさか…魔物を好き勝手弄り回して、操り人形のように作り変えるなんて。

しかも、それをこんな喜々として行うなんて、正気の沙汰ではない。

「さぁ、ご覧遊ばせ…。偉大なる研究の成果を!」

自慢の玩具を見せびらかすように。

イルネが4枚のカードを動かすと、それに連動して、オルトロスを吊り下げているテグスが動いた。

不気味で歪なその動きは、正しく操り人形だった。

…しかも。

「…っ!速っ…!?」

思わず息を呑んでしまうほどに、俊敏な動きだった。

ボロボロの肉塊と化したオルトロスの後ろ足が。

先程の不意打ちのお返しとばかりに、マシュリに強烈な一撃を加えた。