――――――…目の前で起きた決闘が、現実のものだとは思えなかった。

…ベリクリーデが、勝った。

…そう思って良いんだよな?

「ただいま」

けろっとした顔をして、ベリクリーデはルーデュニア聖王国側の観客席に戻ってきた。

「べ、ベリクリーデ…」

お前、本当に…。…無事、なんだよな?

…さっき、ベリクリーデがバニシンにふっ飛ばされて、右手を潰されたとき。

もう無理だと思った。これ以上戦えない、棄権するべきだと。

…それなのに、まさかあの状況から逆転勝利して戻ってくるなんて。

「さすがに疲れた」

そんな、はしゃぎ過ぎて疲れたみたいな。

「…あっ…!右手…!」

俺と同じく、ポカンとしてベリクリーデを見つめていた天音が、ハッと我に返った。

ベリクリーデの右手が潰れていることを思い出したらしい。

「大丈夫?すぐ治すから…!」

慌ててベリクリーデに駆け寄り、回復魔法をかけた…のだが。

「うん。ありが…と、」

「…おっと」

ベリクリーデは突然、ふっと意識を失って倒れそうになった。

そんなベリクリーデを、ジュリスが咄嗟に支えた。

「えっ、だ、大丈夫…!?」 

突然意識を失ったベリクリーデに、天音はぎょっとしていたが。

「大丈夫だ。多分…また眠ったんだろう」

と、答えるジュリス。

眠っただけ…?なら、大丈夫なのか…?

何にせよ、回復魔法はかけておいた方が良いだろうな。

「…お疲れさん、ベリーシュ」

ジュリスは、俺達に聞こえないようにそっと、ベリクリーデの耳元で囁いた。