神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

いよいよ、ルーデュニア聖王国とアーリヤット皇国の決闘、第一回戦が始まった。

対決するのは、ルーデュニア聖王国代表団で唯一の女性であるベリクリーデ。

対するは、今朝のミーティングでルディシアが口にしていたバーサーカー。

バニシン・エル・エドマンという、筋骨隆々な巨斧使い。

「よぉぉし!じゃあ始めるとするか」

そのバニシンは、いかにも嬉しそうに叫び声をあげた。

…こっわ。

この状況を楽しめるという胆力があるだけで、非常に恐ろしい。

ルディシアが警戒していたのも頷ける。

戦うまでもなく分かる。こいつが強敵だと。

強敵じゃなかったら、そもそも決闘の代表には選ばれないだろうけども。

それにしたって、恐ろし過ぎる。

傍から見ているだけの俺でも、これほど恐ろしいのに。

その強敵と対峙して戦っているベリクリーデは、もっと恐ろしい思いをしているに違いない。

それなのに。

「…」

ベリクリーデは挑発には乗らず、至って冷静な表情であった。

胆力の勝負で言ったら、案外こっちも負けてなさそう。

「おぉぉぉらぁっ!」

まずは先制パンチと言わんばかりに、バニシンは巨斧を振るった。

ベリクリーデは横に飛び退いて、その攻撃を躱した。

バニシンが振り下ろした斧が、競技場の床に深々とめり込んだ。

…嘘だろ、おい。

あの一撃だけで、競技場の床は、まるでアイスピックで抉られたように穴が開いていた。

どんな威力してんだよ。

あれもう危険行為だろ。反則負けにしてくれ。

しかも、恐ろしいのは攻撃の威力だけではない。

「おら!おらおらおらぁっ!」

一回避けるくらいは序の口。

バニシンは巨斧を、箸でも扱うかのように軽く振り回し。

右左上下と、自由自在に操ってベリクリーデに向かって振り下ろした。

デブは一撃が大きい代わりに、動きが遅く。

俊敏なベリクリーデにとっては、むしろ有利かもしれない…なんて。

そんな甘っちょろい目算は、窓の外に吹き飛んだ。

こいつ…デブはデブでも、動けるデブだ。

一番面倒なタイプ。

デカい癖に動きも俊敏とか、そんなの反則だろう。