神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜

そして、そんなバニシンに対するは。

「ルーデュニア聖王国代表、ベリクリーデ・イシュテア。前へ」

「…ベリーシュだけどな」

ジュリスが、俺達に聞こえないようにポツリと呟いていた。

星辰剣を両手に持ち、確かな足取りで入場するベリクリーデを。

バニシンとかいうバーサーカーは、にやにやしながら待っていた。

あいつの、あのムカつく顔。

鴨が葱を背負って来た、とでも思ってそうだ。

畜生…舐め腐りやがって。

…しかし、そう思われても無理はない。

「まるで、子供と大人ですね」

「いやぁ…。見た目だけなら、マンモスとアリンコくらいの差がありそうですけど」

二人の決闘者が入場する様を見て、イレースとナジュがそう言った。

…マンモスとアリンコか…。

悔しいけど、言い返せない。

ベリクリーデも、元々細身な体格ではあるが。

それでも、女性の中では小柄とは言えない身長してるんだけどな。

少なくとも、クュルナよりは身長高いし…。何なら、イレースよりちょっと背高くないか?

それなのに、こうして対戦相手のバニシンと並んで見せると、正しく大人と子供。

ベリクリーデが小さいんじゃない。バニシンがデカ過ぎるのだ。

この凄まじい体格差。当然、決闘にも影響があるはずだ。

…しかし。

「大丈夫だよ。身長差で勝負する訳じゃないんだから」

シルナは、俺を落ち着かせるようにそう言った。

「そりゃそうだけど…」

「ベリクリーデちゃんの身のこなしなら、体格差はさして問題にはならないはずだよ」

「…そうであることを祈るよ」

デブは動きが遅い。と、相場が決まっているからな。

ベリクリーデの方が俊敏に動けて、むしろ有利かもしれない。

…いや、バニシンは決してデブなんじゃなくて、筋骨隆々なだけなんだが。

「決闘を始める前に、最後の確認事項の説明をします」

と、マミナ・ミニアルが言った。

「おいおい。いつまでお預けさせる気だ?早く始めろよ」

待ちくたびれたバニシンは、イライラと貧乏揺すりをしていた。

ヤバいって。これ以上あいつを怒らせるなよ。

…で、確認事項って?

「決闘は、対戦相手を戦闘不能にすることで勝者を決めます」

…そういや、そうだったな。

戦闘不能…つまり、相手の生死は問わない。

相手の意識を奪って戦闘不能にしても良いし、相手を殺すことで戦闘不能にしても構わない。

俺としては、是非前者の方で決着をつけたいものだ。